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交通事故の判例

◆低髄液圧症候群


「受傷が否定された低髄液圧症候群の治療費について、事故と因果関係が認められない筋合いではあるが、低髄液圧症候群としてその治療をしたのは医療機関側の判断と責任によるものであるから、被害者が現にその治療費を支払っている以上、安易に減額することは相当でない」として106万円余認めた。
(福岡高裁平19.2.13 交民40・1・1)

「被害者が、交通事故による低髄液圧症候群の発症を主張した事案につき、同症候群については日本神経外傷学会の頭部外傷に伴う低髄液圧症候群の診断基準によることが妥当であるとした上で、被害者には、起立性頭痛がみられないこと、ブラッドパッチの効果が認められないこと等の事情に照らし、同症候群の発症を否定し、同症候群に関するブラッドパッチ療法等の治療費を否定した。」
(名古屋地裁平21.3.18 判時2048・72)

 

 

◆整骨院における治療費について


「追突事故の被害者につき、頸椎捻挫に引き続くバレー・リュー症候群と診断された場合に、バレー・リュー症候群の患者にはカイロプラックティック治療は有効ではなく、むしろ悪影響があると考えられており、医師の指示ではないと認められるが、右施術を受けた後は症状が良くなることが認められ、少なからず被害者の症状を軽快させるのに効果があったことは否定できないとして、48回の通院のうち比較的頻繁に通院していた19回について治療の必要性を認めた。」
(東京地裁判決平成7年9月19日 交通事故民事裁判例集28・5・1358)

「頸椎捻挫の被害者につき、医師の指示を受けずに二か所の接骨院で施術を受けた場合に、治療効果があがっていたとして、両接骨院への通院と事故との間に相当因果関係を認めた。」
(東京地裁判決平成8年12月18日 交通事故民事裁判例集29・6・1809)

 

 

◆通院交通費


「肋骨骨折、慢性硬膜下決腫等による鎖骨及び胸骨の変形、脳波異常等(併合9級)の会社員(男・29歳)につき、頭部手術後の通院であり、入院時全身痙攣を起こしているから近親者が付添うのは当然として、日額3,000円、39日間合計11万7,000円を認めた。」
(神戸地裁姫路支部 判決 平成13年3月29日 自動車保険ジャーナル1426・14)

「病院への通院は公共交通機関を利用しようとすれば、自宅から1時間かけて徒歩で駅まで出なければならず、タクシー利用はやむを得なかったとして、タクシーによる通院費235万円余を認めた。」
(大阪地裁判決 平成7年3月22日 交通事故民事裁判例集28・2・458)

「事故により対人恐怖、外出困難等の症状が生じた専門学校生(女・年齢不詳)につき、通院にタクシーを利用した場合に、原告の主張どおり実通院日数の約6割分、合計22万円余を認めた。」
(神戸地裁判決 平成13年12月14日 交通事故民事裁判例集34・6・1616)

「独身の被害者につき、北海道から姉が6回見舞いに来て付添った際の航空運賃合計35万円余を認めた。」
(名古屋地裁判決 平成19年5月30日 交通事故民事裁判例集40・3・741)

 

 

◆学生の学習費


「女子学生につき、入通院のため1年休学した場合に、退院後1年前後にわたる補修費47万円5,000円を認めた」
(横浜地裁判決 昭和57年1月28日 交通事故民事裁判例集 15・1・135)

「大学院生(女・事故時23歳)につき、半年間休学し、終了が予定より1年遅れた場合に、余分に支払った半年分の授業料26万円余を認めた。」
(京都地裁判決 平成20年2月29日 自動車保険ジャーナル1741・17)

「大学生(男・22歳)の傷害事案につき、司法書士の資格を得るための専門学校の学費全額47万円余を認めた。」
(東京高裁判決 平成14年7月30日 自動車保険ジャーナル1455・2)

 

 

◆保育料等


<保育料を認めた事例>
「3歳女子の付添看護のため、母親が2歳と0歳の乳幼児2人を常時面倒をみることが困難となり保育所に預けざるを得なくなった場合に、保育園・幼稚園に入園させることが一般に見受けられる満4歳になるまでの保育料166万円余を認めた。」
(山口地裁判決 平成4年3月19日 判例タイムズ793・217)

<通学のため賃借したマンションの賃料等を認めた事例>
「受傷により自宅からの通学が困難となった大学生(20歳)につき、大学近くに借りたマンションの卒業まで2年分の賃料、保証金等140万円余を認めた。」
(神戸地裁判決 平成7年2月22日 交通事故民事裁判例集 28・1・241)

<家族の監護料等を認めた事例>
「主婦が入院したため、小学生の娘の養育、監護を両親に依頼せざるを得なくなった場合に、休業損害とは別に扶養料として、入院480日のうち387日分、日額3,000円、合計112万8,000円を認めた。」
(仙台地裁判決 平成19年2月9日 自動車保険ジャーナル 1740・19)

 

 

◆帰国費用等


<海外からの帰国費用等を認めた事例>
「傷害の程度等から近親者の看護が必要であったとして、ウィーンに留学中だった長女の帰国旅費を認めた。」
(最高裁判決 昭和49年4月25日 最高裁判所の民事判例集 28・3・447 交通事故民事裁判例集7・2・286)

「実子の海外出張中止による往路の航空券のキャンセル料並びにその後の容体の悪化により実子及びその妻子が海外から帰国する費用、合計160万円余を認めた。」
(京都地裁判決 平成3年4月24日 自動車保険ジャーナル939・2)

「母親の死亡により、子が留学先の米国から帰国した際の交通費23万円余を認めた。」
(東京地裁判決 平成7年7月4日 交通事故民事裁判例集 28・4・1039)
 

<渡航費用を認めた事例>
「被害者がアメリカで交通事故に遭い、重傷を負ったとの電話連絡を受けて母と姉とが渡米した場合に、母分のみ30万円余を認めた。」
(岡山地裁判決 平成12年1月25日 交通事故民事裁判例集 33・1・157)



 

◆鍼灸費用等


<鍼灸、マッサージ費用を認めた事例>
「追突事故の被害者(女・65歳)につき、頸椎捻挫に引き続くバレー・リュー症候群と診断された場合に、バレー・リューの患者にはカイロプラックティック治療は有効ではなく、むしろ悪影響があると考えられており、医師の指示ではないと認められるが、右施術を受けた後は症状がよ くなることが認められ、少なからず被害者の症状を軽快させるのに効果があったことは否定できないとして、48回の通院のうち比較的頻繁に通院していた19回について治療の必要性を認めた。」
(東京地裁判決 平成7年9月19日 交通事故民事裁判例集28・5・1358)

「柔道整復師による治療につき、医師の指示によるものではないものの、被害者(女・年齢不明)が治療により相当程度以上の症状の軽減回復を感じていることが認められるとして、事故との相当因果関係を認めた。」
(神戸地裁判決 平成9年9月19日 交通事故民事裁判例集28・5・1384)

「頸部捻挫の被害者につき、医師の指示を受けずに二カ所の接骨院で施術を受けた場合に、治療効果があがっていたとして、両接骨院への通院と事故との間に相当因果関係を認めた。」
(東京地裁判決 平成8年12月18日 交通事故民事裁判例集29・6・1809)

「頸部・腰部捻挫のダンプカー運転手(14級)の接骨院(徒手整復療法)の治療費につき、医師の明確な指示を受けたことの証明はないが、ある程度の痛みを緩和する効果はあったものと認められるとして、120万円余の請求のうち30万円の限度で認めた。」
(大阪地裁判決 平成13年8月28日 交通事故民事裁判例集34・4・1093)

「頸椎捻挫、両膝捻挫、右下腿打撲で併合14級の被害者(男・31歳)につき、医師の指示はないが、施術により疼痛が軽快し整形外科における治療回数が減少していること、施術費が社会一般の水準と比較して妥当であること、加害者らが施術を認めていたこと等から、症状固定までの接骨院施術費全額を認めた。」
(東京地裁判決 平成16年2月27日 交通事故民事裁判例集37・1・239)

「頸椎捻挫等で約2年5カ月通院し14級の美容師(女・51歳)につき、接骨院での施術は症状を緩和する効果があったと認められ、医師も施術を容認していたが、積極的指示までは認められず、治療日が整形外科と重複していることなどから、施術費の50%である69万円余を認めた。」
(大阪地裁判決 平成18年12月20日 自動車保険ジャーナル1707・14)

 
 

◆症状固定後の治療費


<症状固定後の治療費を認めた事例>
「右大腿部切断の症状固定後に、義足を作成するための通院、その後の再入院、通院をした場合の治療費を認めた。」
(名古屋高裁判決 平成2年7月25日 判例時報1376・69)

「下半身麻痺による介護リハビリ費用として24万円余を認めた。」
(浦和地裁判決 平成7年12月26日 交通事故民事裁判例集28・6・1870)

「肩関節及び頸部の運動制限や疼痛等を後遺障害12級と認定し、症状固定後1年3カ月の治療費につき、改善は期待できないまでも保存的治療としては必要であったと推定されるとして、事故との因果関係を認めた。」
(神戸地裁判決 平成10年10月8日 交通事故民事裁判例集31・5・1488)

「頭部外傷Ⅲ型等による植物状態(1級3号)の高校生(男・16歳)につき、症状固定後も個室の使用が必要であるとして、症状固定から退院まで405日間分の部屋代合計407万円余を認めた。」
(大阪地裁判決 平成12年7月24日 交通事故民事裁判例集33・4・1213)

「1級3号の会社員(男・固定時59歳)につき、入院中症状固定となり転院を要請されたため、妻らが探したものの、適当な転院先が見つからなかった場合に、自宅介護の体制が整って退院するまでの間、病院の了解を得て継続した固定後132日分の入院費用(金額不明)を認めた。」
(大阪地裁判決 平成15年12月4日 交通事故民事裁判例集36・6・1552)

 

 

◆損害賠償請求関係費用


診断書料等の文書料、成年後見開始の審判手続費用、保険金請求手続費用など、必要かつ相当な範囲で認める。

「センターラインオーバーが争点となった事故の態様解明のため、事故状況を交通事故工学の専門家に、スリップ痕の位置特定を写真及び測量の専門家に、それぞれ私的に依頼した鑑定費用200万円を認めた。」
(東京地裁八王子支部判決 平成10年9月21日 交通事故民事裁判例集31・5・1430)

「1級3号の被害者(男・32歳・銀行員)につき、後見申立費用10万円余を認めた。」
(東京地裁判決 平成16年12月21日 交通事故民事裁判例集37・6・1695)

「右膝痛・右膝以上知覚(RSD、12級12号)の看護師(女・固定時34歳)につき、鑑定意見書作成費用50万円のうち30万円を認めた。」
(東京地裁判決 平成17年2月15日 交通事故民事裁判例集38・1・219)


 

◆将来の看護料


医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認める。
職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8,000円。但し、具体的看護の状況により増減することがある。
なお、1級3号の後遺障害を残した被害者が控訴審係属中に胃がんで死亡した事案につき、死亡以降の介護は不要になるから、介護費用の賠償を命ずべき理由はないとして、被害者死亡後の介護費用を損害と認めなかった
(最高裁判決平成11年12月20日 判例事報1700・28)

「遷延性意識障害(センエンセイイシキショウガイ)(1級3号)の会社員(女・固定時25歳)につき、介護のため自分の時間がとれない等、精神的・肉体的に厳しい生活を強いられているとして近親者看護料を日額1万円とし、母67歳までは近親者年365日分と職業付添人年52日分(日額1万4,000円)に訪問看護費用(26万円余)を加えた計3,299万円余、それ以降平均余命年数50年間は職業付添人2名分(うち1名は週1回)日額1万4,000円と訪問看護費用計7,181万円余、合計1億480万円余を認めた。」
(京都地裁判決平成16年11月1日自動車保険ジャーナル1593・2)

「高次脳機能障害(1級3号)の被害者(女・固定時60歳)につき、同居する長男が退職して介護に当たっているが長男は将来就労の予定があるとして、1年365日のうち240日は職業付添人11時間及び近親者で日額2万円、125日は近親者日額1万円、合計8,859万円余を認めた。」
(さいたま地裁判決平成18年8月4日 自動車保険ジャーナル1682・3)


◆休業損害・給与所得者


「居酒屋チェーンの店長(男・27歳)につき、源泉徴収を受けておらず、確定申告もしていない場合に、賃金センサス男性高卒25歳から29歳平均を基礎として算定した。」
(東京地裁判決平成10年11月4日 交通事故民事裁判例集31・6・1699)

「被害者(男・固定時37歳、外傷性てんかん9級10号)につき、事故日から勤務する予定だった会社の初任給を基礎として、事故時から約8カ月間100%、その後固定時まで約1年5カ月間35%の休業損害を認めた。」
(東京地裁判決 平成13年5月30日 交通事故民事裁判例集34・3・709)

「エステティシャン(女・34歳)につき、転職し国際資格を取得するため研修中であったため一時的に収入が低額(月額21万円余)になっていたとして、事故前年のエステティシャンとしての年収493万円余を基礎とした。」
(東京地裁判決 平成18年12月27日 交通事故民事裁判例集39・6・1788)


 

◆休業損害・事業所得者


「理容師(女・固定時59歳、14級10号)につき、事故直前まで1年間の合計収入を基礎に、事故日から症状固定まで右肩、頸部痛、右手の痺れ、腰痛、右膝痛が続いていたとして、全期間(328日間)100%を認めた。」
(岡山地裁判決平成11年12月20日交通事故民事裁判例集32・6・1978)

「左官職人(男・固定時42歳、骨盤骨変形12級5号・右肩関節の可動域制限は非該当)につき、右肩の機能や筋力回復の必要、作業の安全性等の事情を考慮して、症状固定まで600日間100%を認めた。」
(東京地裁判決平成13年5月29日交通事故民事裁判例集34・3・648)

「歯科医師(女・しびれ痛や知覚鈍麻14級)につき、事故の少し前から先輩の歯科医院でアルバイト的に稼働し、事故3日後から3カ月間、時給5000円で1日実働6時間、土日休日の条件で働くことになっていたが、事故による左母趾のしびれや痛みのため就労を辞退したとして、勤務開始予定日から症状固定まで54日間、日額2万円で算定した。」
(大阪地裁判決平成18年9月15日交通事故民事裁判例集39・5・1291)

 

◆休業損害・家事従事者


<家事従事者>
「賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として、受傷のため家事労働に従事できなかった期間につき認められる。」(最高裁判決昭和50年7月8日交通事故民事裁判例集8・4・905)
パートタイマー、内職等の兼業主婦については、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出する。

認定例
「主婦(24歳、9級10号)につき、事故により家事ができなかった場合に、その期間の家政婦雇用費を休業損害として認めた。」
(横浜地裁判決平成7年9月29日交通事故民事裁判例集28・5・1443)

「専業主婦(48歳、併合7級)につき、賃金センサス女性学歴計45歳から49歳平均を基礎に、事故当日から症状固定まで556日間、完全な休業を要したと認めた。」
(大阪地裁判決平成13年1月25日交通事故民事裁判例集34・1・61)

「妊娠中の専業主婦(固定時28歳、左足関節の可動域制限12級7号)につき、賃金センサス女性全年齢平均を基礎に、出産のため入院した8日間を除き、傷日から出産のための入院の前日まで242日間は100%、退院の翌日から90日間は60%、その後症状固定まで50日間は30%の労働能力制限を認めた。」
(東京地裁判決平成15年12月8日交通事故民事裁判例集36・6・1570)

「本件事故前からうつ病で通院し睡眠導入剤の処方を受けていた主婦(50歳、夫はパキスタン国籍で事故当時は母国に2カ月間一時帰国中)につき、心身健康な専業主婦であることを前提とする賃金センサスによる額を基準とすることは出来ないとの加害者の主張を採用せず、女性全年齢平均を基礎に、82日間79万円余を認めた。」
(さいたま地裁判決平成17年10月5日交通事故民事裁判例集38・5・1378)

「主婦兼パートタイマー(53歳、左下肢神経症状12級12号)につき、賃金センサス女性学歴計50歳から54歳平均を基礎に、入院期間97日間は100%、その後症状固定まで288日間は70%の就労不能として算定した。」
(名古屋地裁判決平成11年4月28日交通事故民事裁判例集32・2・703)

「入退院を繰り返していた妻及び娘と同居し、妻に代わって家事の多くを分担していた被害者(男・81歳、併合7級)につき、家事労働を月額18万円と評価し、事故日から76日間は100%、それ以降症状固定まで1008日間は平均して75%の労働能力低下として算定した。」
(大阪地裁判決平成11年2月18日交通事故民事裁判例集32・1・296)


 

◆休業損害・事業所得者Ⅱ


<減収はないが休業損害を認めた事例>
「妻の協力により減収のない建設工事業代表者につき、賃金センサス男性学歴計35歳から39歳平均を基礎として、入院中は100%、その後の1年間は50%、その後症状固定まで133日間は20%の労働能力制限を認めた。」
(大阪地裁判決平成9年3月25日自動車保険ジャーナル1226・2)

「鍼灸師の資格を有し、柔道整復師の資格を有する妻と共に整骨院を営む被害者(男・年齢不明)につき、事故後の整骨院の営業収入は事故前のそれとさして遜色ないが、これは被害者の長男の寄与が一部貢献していると認められるから、事故前の営業収入の大半が妻の働きに係っていたということはできないとして、事故前の年度の売上収入から売上原価を控除した2分の1を被害者の収入とした。」
(大阪地裁判決平成12年3月7日交通事故民事裁判例集33・2・497)

「不動産鑑定士(男・43歳・14級10号)につき、事故後に所得が増加しているが、仕事量を増やすことができないまま事故前に受注した仕事をしていたことを考慮し、事故前年の所得を基礎に、症状固定まで202日間、平均2割労働能力を喪失したとして、182万円余を認めた。」
(東京地裁判決平成18年10月30日交通事故民事裁判例集39・5・1509)


<申告所得を超える収入を認めた事例>
「妻を事業専従者とする土木工事業者(道路舗装切断業)(男・45歳)につき、本人の申告所得額に専従者給与額を加えた金額を基礎とした。」
(大阪地裁判決平成5年1月12日交通事故民事裁判例集26・1・17)

「数名を雇用し自ら往診に従事(月平均20日間往診、往診日1日当たりの売上額は5万円余)していた針灸マッサージ業(男・49歳)につき、修正申告後の所得額(年額1151万円余)を基礎とした。」
(大阪地裁判決平成12年1月27日交通事故民事裁判例集33・1・180)

「電気工事業者(男・54歳)につき、確定申告額は100万円余であったが、事故前の収入及び経費について、主な受注先への売上が640万円あって経費が93万円と認められるとして、年額550万円を基礎とした。」
(大阪地裁判決平成13年2月15日交通事故民事裁判例集34・1・224)

「建設業者(男・固定時74歳)につき、事故前年の確定申告額は113万円余であるが、税務申告地以外の他県においても建設業を行っていたが確定申告をしていなかったこと等の事情から、賃金センサス第3巻第16表の企業規模5~9人の建設業の男性学歴計65歳以上平均334万3000円を基礎とした。」
(東京地裁判決平成15年12月1日交通事故民事裁判例集36・6・1521)

「建設業者(男・事故時53歳、14級9号)につき、事故前3年の申告所得額は、収入金額に比して低額に過ぎ、到底現実の生活水準が維持できないとみられること、従業員10数名を雇用して個人で建設業を営んでいたことから、賃金センサス男性学歴計50歳から54歳平均687万5000円を基礎とし、事故後半年間の売上は前年同期と比較して35.5%減少していることから、症状固定まで35.5%の減収を認めた。」
(大阪地裁判決平成20年3月11日交通事故民事裁判例集41・2・283)

<事業所得者の休業損害(固定経費に関する事例)>
「資材店経営者(男・50歳)につき、事業再開の可能性がある場合には必要な経費(租税公課、損害保険料、利子割引料、地代家賃、諸会費、リース料)を申告所得額に加えて基礎年収とするのが相当であるが、事業廃止届を提出するなどして事業を廃止することが確定した以降においては、もはやこれらの経費を支出する理由はないとして、申告所得額を基礎年収とした。」
(大阪地裁判決平成9年7月29日交通事故民事裁判例集30・4・1068)

「喫茶店経営者につき、店舗家賃、駐車場、光熱費、自動車保険料、火災保険料、自動車税、個人事業税の支払い額を認めた。」
(大阪地裁判決平成11年11月9日交通事故民事裁判例集32・6・1792)

「極めて優秀な業績をあげていた生命保険外交員(女・42歳)につき、事故前2年間の平均年収1367万円余に、休業中も支出を余儀なくされた通信費、接待交際費及び諸会費の合計486万円余を固定経費として加算したものを基礎に、315日間合計1599万円余を認めた。」
(京都地裁判決平成14年5月23日自動車保険ジャーナル1458・2)

「薬局経営者(女・固定時64歳)につき、営業収入から売上原価を差し引いた184万円余に、経費として損害保険料、減価償却費、地代家賃の合計33万円余を加算したものを基礎収入とした。」
(東京地裁判決平成19年7月30日交通事故民事裁判例集40・4・1014)



◆休業損害・会社役員会社役員

報酬については、労務提供の対価部分は休業損害として容認されるが、利益配当の実績をもつ部分は消極的である。

「建物解体工事・建材卸業等を目的とする会社の代表者につき、個人会社で被害者の職務内容も肉体労働が多いこと等から、月額100万円の役員報酬全額を労務の対価と認めた。」
(千葉地裁判決平成6年2月22日交通事故民事裁判例集27・1・212)

「会社の副社長が事故に遭って就労できなくなったこともあって会社の経営が不振となり、事故の2年後に会社更生開始決定が出された場合に、副社長の休業損害を算定する際には同決定を考慮しないのが相当として、事故時の年収を基礎に、約3年分の休業損害を認めた。」
(神戸地裁判決平成10年4月24日交通事故民事裁判例集31・2・614)

「会社役員(男・固定時41歳)につき、名目的取締役であったこと、従業員として労働に従事していたこと、事故後報酬の全額が支給されていないことから、役員報酬部分(月額4万5000円)についても労働の対価であったとして、事故前の年収806万円余を基礎とした。」
(東京地裁判決平成11年6月24日交通事故民事裁判例集32・3・925)

「鉄工業を目的とする会社の代表者(男・高卒・固定時62歳)につき、会社は事故当時営業損失を出していたが、年間1200万円の役員報酬が支払われていたこと、賃金センサス、他の役員報酬や従業員の賃金との比較等を併せ考えて役員報酬額の7割840万円を労務の対価と認めた。」
(東京地裁判決平成11年10月20日交通事故民事裁判例集32・5・1579)

「会社役員(男・固定時36歳)につき、取締役として報酬810万円を得ていたが、取締役就任前と同様に作業現場に出て現場監督を行ったり、クレーンの操作等の作業を行い従業員として勤務していたことから、その報酬は全て労働の対価であるとしたうえで、税務処理の都合上、事故年度は役員報酬を減額せず、次年度において休業損害に相当する減額がなされた場合に、当該減額分330万円を休業損害と認めた。」
(名古屋地裁判決平成16年4月23日交通事故民事裁判例集37・2・557)


 

◆休業損害・兼業主婦


「新聞購読料の集金で月額7万8000円の収入を得ていた主婦(53歳)につき、入院期間が161日、通院実日数が251日、最終的に12級12号の後遺障害が残存したこと等から、休業期間592日全体について平均して90%の労働能力の制約があったとして、賃金センサス女性全年齢平均を基礎に算定した。」
(東京地裁判決平成10年12月9日交通事故民事裁判例集31・6・1872)

「主婦兼パートタイマー(53歳、左下肢神経症状12級12号)につき、賃金センサス女性学歴計50歳から54歳平均を基礎に、入院期間97日間は100%、その後症状固定まで288日間は70%の就労不能と算定した。」
(名古屋地裁判決平成11年4月28日交通事故民事裁判例集32・2・703)

「育児休業中に事故に遭った会社員兼主婦(事故時36歳)につき、職場復帰予定日に復帰できなかった場合に、育児休業中は賃金センサス女性学歴計を基礎とし、復帰予定日から実際に復帰した日までは育児休業前の年収である642万円余を基礎とした。」
(大阪高裁判決平成16年9月17日自動車保険ジャーナル1588・2)

「有職主婦(33歳、14級)につき、脳脊髄液減少症及び胸郭出口症候群は否定したものの、事故日から症状固定まで506日間、75%の労働能力の制限があったとして、賃金センサス女性全年齢平均を基礎に366万円余を認めた。」
(大阪地裁判決平成18年9月27日交通事故民事裁判例集39・5・1341)

「主婦兼ピアノ講師(45歳、右肩から右上肢の疼痛としびれ等12級12号)につき、賃金センサス女性学歴計45歳から49歳平均をもとに講師として就労していた週1.5日相当分を減算し、これに講師としての給与年額120万円を加算した423万3642円を基礎に、事故日から181日間100%、それ以降1年57日間50%の休業を余儀なくされたとして454万円余を認めた。」
(名古屋地裁判決平成18年12月15日交通事故民事裁判例集39・6・1763)

 
 

◆休業損害・失業者


労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるものは認められるが、平均賃金より下回ったところになる。

「約5年前の交通事故以来無職であったスタイリスト・デザイナー(女・年齢不明)につき、本件事故直前には就労可能の程度まで前事故に起因する障害が回復しており、就職活動をしていた矢先の事故であったことから、賃金センサス女性全年齢の8割を基礎として算定した。」
(東京地裁判決平成7年7月18日交通事故民事裁判例集28・4・1077)

「60歳で定年退職し事故当時は無職であったが、3ケ月後には再就職することが内定していた被害者(男・61歳)につき、再就職予定時以降の休業損害を、再就職したら得られる見込みであった給与を基礎にして算定した。」
(大阪地裁判決平成9年11月27日交通事故民事裁判例集30・6・1696)

「転職のため退職後、再就職先を探していた被害者(男・43歳)につき、事故時には就職先が具体的に決まっておらず、再就職するまでになお期間を要したとして、事故の8日後(退職の20日後)から実際に再就職した日まで67日間の休業損害を、再就職先の収入を基礎に算定した。」
(大阪地裁判決平成11年12月15日自動車保険ジャーナル1348・2)

「離職して積極的に就職先を探していたアルバイト中の被害者(男・45歳)につき、事故前年の給与収入額596万円余を基礎に、症状固定までの232日から職を得られるまでの相当期間90日を控除した142日分、232万円余を認めた。」
(大阪地裁判決平成17年9月8日自動車保険ジャーナル1629・2)

「高校卒業後就職したが、その後ホテルでアルバイトしながら専門学校ホテル学科に通い、専門学校卒業後約6ケ月にわたり就職活動をしていた被害者(男・事故時26歳、うつ状態等9級10号)につき、就職の可能性があったとして、事故年賃金センサス男性高卒25歳から29歳平均の7割を基礎として、症状固定まで約2年間543万円余を認めた。」
(名古屋地裁判決平成19年11月21日交通事故民事裁判例集40・6・1499)

 
 

◆休業損害・男性の家事従事者


「入退院を繰り返していた妻及び娘と同居し、妻に代わって家事の多くを分担していた被害者(男・81歳、併合7級)につき、家事労働を月額18万円と評価し、事故日から76日間は100%、それ以降症状固定まで1008日間は平均して75%の労働能力低下として算定した。」
(大阪地裁判決平成11年2月18日交通事故民事裁判例集32・1・296)

「パーキンソン病で寝たきりの状態となった妻の介護を行っていた被害者(男・71歳)につき、妻の介護を行っていたことを家事労働と認め、賃金センサス女性学歴計65歳以上平均80%を基礎に、事故日から妻が死亡した日まで1850日間、1211万円余を認めた。」
(東京地裁判決平成14年7月22日交通事故民事裁判例集35・4・1013)

「求職活動中の無職者(男・57歳、頸椎捻挫・左足打撲等で36日間入院281日間通院)につき、就労している妻に代わって家事労働をしていたとして、賃金センサス女性全年齢平均を基礎に、入院期間は100%、通院期間は20%の労働能力喪失として88万円余を認めた。」
(京都地裁判決平成17年7月28日自動車保険ジャーナル1617・5)

「フルタイムで仕事する妻及び二女と同居していた無職者(男・66歳、軽度の片麻痺12級の既存障害を有し今回の事故で1級3号)につき、日常的に家事労働に従事していたとして、賃金センサス女性学歴計65歳以上平均から既存障害分(14%)を控除した269万2058円を基礎に、637日間家事労働が全くできなかったとして469万円余を認めた。」
(名古屋地裁判決平成20年5月21日自動車保険ジャーナル1741・2)



◆逸失利益(基礎収入・有職者)

 

<給与所得者>
原則として事故前の収入を基礎として算出する。現実の収入が賃金センサスの平均賃金以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、それを認める。若年労働者(事故時概ね30歳未満)の場合には、学生との均衡の点もあり全年齢平均の賃金センサスを用いるのを原則とする。

「症状固定後の最新の賃金センサスを基礎にした。」
(最高裁判決<第2小法廷>平成5・12・3交通事故民事裁判例集26・6・1375、東京高裁判決平成5・5・26、東京地裁八王子支部判決平成4・9・25交通事故民事裁判例集26・3・594)

「公務員(男・固定時54歳)の四肢麻痺、知覚脱失、膀胱障害(1級3号)につき、60歳の定年まで事故前年収入979万円余、以降67歳まで事故前年収入の80%を基礎とした。」
(大阪地裁判決平成15・7・4自動車保険ジャーナル1529・21)

「会社員(男・固定時33歳)の頸部痛、両膝痛(併合14級)につき、事故の翌年(収入減少が現実化した直近)の年収額444万円余は賃金センサス平成8年男性学歴計30歳から34歳平均の約85%であったが、当該年度は治療等のための休業を余議なくされていた状況下であったこと、事故当時まだ勤続年数が少なく、その先稼働を続けた場合には定期昇給等による年収増加が予想されること、学歴、能力、勤労意欲等から、賃金センサス男性高卒全年齢平均539万0600円を基礎とした。」
(東京地裁判決平成16年2月27日交通事故民事裁判例集37・1・239)

「派遣会社員(男・固定時44歳)の平衡機能(12級12号)、外貌醜状(12級13号、併合11級)につき、事故前3カ月の収入は62万円余(年収250万円余)であり、事故前3年間の収入を裏付ける証拠はないが、過去(事故6年前から4年前)には平均賃金を超える収入を得ていた時期もあり、44歳では再就職の可能性もあるとして、賃金センサス男性学歴計前年齢平均の7割396万1370円を基礎とした。」
(東京地裁判決平成16年7月5日交通事故民事裁判例集37・4・883)

「ラーメン店住込み店員(男・固定時49歳)の左足関節の機能障害(10級11号)につき、給与収入は月10万円程度であるが、住居の一部を廉価で借り受け食事などの提供を受けていること、以前は月30万円程度の収入を得、将来は独立する予定で2000万円以上の貯蓄をしていること等を考慮し、賃金センサス男性中卒年齢別平均の60%である308万0280円を基礎とした。」
(東京地裁判決平成17年10月17日交通事故民事裁判例集38・5・1424)

 

 

◆逸失利益(給与所得者)


「料理人(男・固定時31歳)の右膝関節可動域制限(12級7号)、右大腿部痛(14級10号、併合12級)につき、事故前年の年収424万円余が賃金センサス男性年齢別平均額を上回っていたことから、賃金センサス男性全年齢平均542万7000円を基礎に、67歳まで14%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成18年8月28日交通事故民事裁判例集39・4・1144)

「救急救命士の資格を有する消防士(男・固定時32歳)の脊柱変形(11級7号)につき、学歴は高卒であるが、事故前年の年収570万円余は大卒男性年齢別平均額を6%上回っていたことから、賃金センサス男性大卒全年齢平均の6%増しである696万9288円を基礎に、67歳まで20%の労働能力喪失を認めた。」
(名古屋地裁判決平成19年2月23日交通事故民事裁判例集40・3・782)

「運転手(男・事故時41歳)の高次脳機能障害、右下肢短縮障害等(併合2級)につき、本件事故前の休業損害証明書上の収入をもとに年収に換算すると約383万円であるが、運送会社に就職したばかりであり、今後収入の増加が見込まれる長距離運送に従事することが期待できたこと、労働能力喪失期間の長さ等を考慮し、賃金センサス男女計学歴計全年齢平均488万1100円を基礎とした。」
(東京地裁判決平成20年1月24日交通事故民事裁判例集41・1・58)

 

◆逸失利益・精神・神経症状の場合


「主婦(女・固定時40歳)の頸部痛など(自賠責非該当)につき、全脊柱前弯変形、両下肢筋力低下と知覚鈍麻が存するとして7級と認め、賃金センサス女性全年齢平均を基礎に、27年間56%の労働能力喪失を認めた。」
(浦和地裁判決平成12年3月29日 交通事故民事裁判例集33・2・639)

「被害者(女・固定時31歳)の両上下肢の運動障害、立位・歩行不能(自賠責は再度の認定申請でも非該当)につき、頸髄損傷ではないが事故以前には症状が全くなかったことから事故に起因し後遺障害等級5級2号に該当するとして、38年間79%の労働能力喪失を認めた。」
(神戸地裁判決平成14年1月17日 交通事故民事裁判例集35・1・47)

「タクシー運転手(男・固定時59歳)の外傷性てんかん(自賠責非該当、労災障害等級9級)につき、9級に該当するとし、自賠責の認定した右足関節痛(12級12号)との併合8級だが、就労の障害となるのは専ら外傷性てんかんであるとして、11年間35%の労働能力喪失を認めた。」
(大阪地裁判決平成15年6月27日 交通事故民事裁判例集36・3・893)

「ラーメン店経営(男・固定時37歳、自賠責は頸部、腰部の神経症状14級10号)の両膝の神経症状につき、事故後3カ月経過して初めてMR1撮影が行われたが、当初頭を打ち頭痛がひどく左腿と左肘が最も痛かったため順次治療していたためであり、MRI等医学的所見もあることから12級12号に該当するとし、事故当時自ら調理等に従事していたこと等から、7年間14%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成18年2月6日 交通事故民事裁判例集39・1・125)


 

◆減収がなくても逸失利益を認めている事例


「会社員(男・固定時28歳)の上腕神経叢損傷、脳挫傷後の右上肢不全麻痺(10級)につき、利き腕の右上肢不全麻痺は事務職という仕事の内容からすると直接仕事の効率に影響するはずのものであり、努力によって減収を免れているに過ぎないとして、39年間27%の労働能力喪失を認めた。」
(大阪地裁判決平成10年12月1日 交通事故民事裁判例集31・6・1820)


「看護師(女・固定時51歳)の右足関節機能障害(10級11号)につき、減収を生じていないが、労働能力の低下から勤務を継続できないおそれがある等として、16年間20%の労働能力喪失を認めた。」
(大阪地裁判決平成11年12月2日 交通事故民事裁判例集32・6・1906)

「整骨院勤務(男・固定時33歳)の左肩関節機能障害等(併合9号)につき、就労の上で相当の不便を被っており、努力によって減収を免れているとして、34年間27%の労働能力喪失を認めた。」
(大阪地裁判決平成14年2月22日 交通事故民事裁判例集35・1・251)

「信用金庫営業係長(男・固定時40歳)の右下腿部疼痛等(12級12号)、右足関節可動域制限(10級11号、併合9級)につき、所得が減少していないのは特別の努力によるもので、役職である係長から内勤の主事に異動することになって将来の昇給・昇進等不利益を受けるおそれがあるとして、定年60歳までは事故前年の給与収入(549万0153円)、60歳から65歳までは賃金センサス男性学歴計60歳から64歳平均(451万2400円)、65歳から67歳は同65歳以上平均(404万9700円)を基礎に、40歳から50歳までの10年間は35%、50歳から67歳までの17年間は27%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成20年3月11日 交通事故民事裁判例集41・2・271)

 
 

◆逸失利益・PTSDその他の非器質性精神障害が問題となった事案


特にPTSDその他の非器質性精神障害、RSD(CRPS)においては、素因減額が争点になる場合が多い。

「小学生(男・事故時11歳)につき、具体的症状等を検討のうえPTSDとは認定せず「特定不能の不安障害」(9級10号)とし、身体能力や知的能力の点では就労に制限はないが、単独で外出が困難で就業できる職種が相当限定されるとして、18歳から10年間35%の労働能力喪失を認めた。」
(東京高裁判決平成15年8月28日 自動車保険ジャーナル1515・5)

「主婦(固定時29歳)の微熱、いらいら感、めまい、吐き気、抑うつ感等の症状(自賠責14級10号)につき、一審の認定したPTSDを否定し、器質的障害も認められないとしながら、十分な家事労働を行えず複数回自殺未遂もあることなどから9級10号として、10年間35%の労働能力喪失を認めた。」
(福岡高裁判決平成16年2月26日 判例時報1860・74)

「実兄経営のマンション管理会社勤務の主婦(女・固定時32歳)の頸部痛、左肩・前腕しびれ症状、不眠・全身倦怠感、意欲低下、フラッシュバックに対する恐怖(併合14級)につき、PTSDの発症は否定したが、18年間5%の労働能力喪失を認めた。」
(名古屋地裁判決平成16年10月22日 交通事故民事裁判例集37・5・1422)

「ツアーガイド(女・固定時21歳)の頸部疼痛等、PTSDの症状を呈する外傷性神経症(各14級10号、併合14級)につき、14級10号を超えるものではないとしながら、被害者の症状に照らして、賃金センサス女性短大卒年齢別平均を基礎に、10年間10%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成17年10月25日 交通事故民事裁判例集38・5・1443)

「主婦兼看護助手(女・年齢不詳)につき、事故により中程度のPTSDで12級相当の後遺障害が残ったとし、PTSD以外の頸椎捻挫後の頚部痛、両上肢痛しびれ、頭痛等(14級10号)、腰椎捻挫後の腰痛、両下肢痛等(14級10号)とあわせて、10年間14%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成17年11月30日 交通事故民事裁判例集38・6・1608)

 

 

◆逸失利益・RSDが問題となった事案


「夫の開業する歯科医院勤務(固定時53歳)のRSDにともなう神経症状(12級12号)、左足関節機能障害(12級7号)、肋骨骨折後の疼痛(14級10号)、歯牙折損(14級2号、併合11級)につき、RSDにかかり易い心因的要素の寄与を理由に減額すべきとの加害者側の主張を斥けて、14年間20%の労働能力喪失を認めた。」
(横浜地裁判決平成13年10月12日 自動車保険ジャーナル1421・2)

「アルバイト(女・固定時27歳)の頚部挫傷から左上肢RSDを発症し1年半後の症状固定後に左下肢にもRSDを発症した場合に、左上肢は7級4号、左下肢の独立歩行困難も7級4号で併合5級とし、将来改善されることは困難として、50年間79%の労働能力喪失を認めた。」
(名古屋地裁判決平成16年7月28日 交通事故民事裁判例集37・4・1020)

「看護師(女・固定時34歳)の右膝痛、右膝の異常知覚等(自賠責非該当)につき、これらの症状がRSDであると認め、少なくとも局部に頑固な神経症状を残すもの(12級12号)に該当するとして、事故前収入627万円余を基礎に、10年間14%、その後10年間10%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成17年2月15日 交通事故民事裁判例集38・1・219)

「システムエンジニア(男・固定時36歳)の左上肢のRSD(自賠責12級12号)につき、かなりの頻度で治療を受け、1回の治療において5か所に局所麻酔を注射しなければ効果を期待できない状況にあり、軽易な労務以外の労務に常に差し支える程度の疼痛であるとして、31年間56%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成19年7月23日 交通事故民事裁判例集40・4・919)

 
 

◆逸失利益・局部の神経症状


「主婦(女・固定時50歳)の左脛骨近位部粉砕骨折等による左膝関節痛(12級12号)につき、賃金センサス女性学歴計全年齢平均を基礎に、18年間14%の労働能力喪失を認めた。」
(さいたま地裁判決平成17年10月5日 交通事故民事裁判例集38・5・1378)

「派遣社員(男・固定時38歳)の左尺骨茎状突起骨折後の左手首の痛み等(12級12号)につき、10年間14%、その後19年間10%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成18年1月11日 自動車保険ジャーナル1640・20)

「主婦兼会社員(女・40歳代)の腰部捻挫などによる12級12号につき、賃金センサス女性学歴計40歳から44歳平均を基礎に、10年間14%、その後10年間5%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成17年5月24日 自動車保険ジャーナル1619・6)

「専業主婦(固定時36歳)の右膝挫傷後の右膝痛(14級10号)につき、事故後6年が経過した時点においても右膝痛が残存しており、ひどい時には点滴治療を受けていること、足に負担の掛かる家事に支障が生じていること、後遺障害診断書に将来の増悪の可能性を認める記載があることから、31年間5%の労働能力喪失を認めた。」
(名古屋地裁判決平成20年4月4日 交通事故民事裁判例集41・2・497)

「主婦(固定時63歳)の唇横の線状痕及び瘢痕(12級14号)と左右足の骨折部のしびれ等の神経症状(各14級10号、併合12級)につき、左右足の神経症状は立ち仕事の多い家事労働に支障を来たすこと、神経症状は骨折に基づくものであること、顔面醜状は家事労働能力を喪失させつものではないこと等を総合し、平均余命の約2分の1(11年間)5%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成15年1月22日 自動車保険ジャーナル1511・21)

 
 

◆逸失利益・外貌醜状


「女児(固定時6歳)の顔面醜状痕(7級)につき、18歳から67歳まで49年間25%の労働能力喪失を認めた。」
(神戸地裁判決平成3年6月26日 交通事故民事裁判例集24・3・736)

「寿司職人(女・固定時31歳)の右顔面の変形・醜形(7級)、味覚低下、複視、感音難聴等につき、36年間56%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成6年12月27日 交通事故民事裁判例集27・6・1892)

「アルバイト(女・固定時25歳)の顔面醜状(7級)につき、左下眼瞼下垂により笑ったとき左目が開くこと、左鼻穴形態が右と異なり6㎝の線状痕を残すこと、アルバイトとはいえ接客業に就いていたこと等から、賃金センサス女性全年齢平均を基礎に、42年間30%の労働能力喪失を認めた。」
(大阪地裁判決平成17年9月21日 交通事故民事裁判例醜38・5・1291)

「主婦兼新聞配達員(女・固定時53歳)の脳挫傷後の頭痛(12級12号)、前額部組織陥没の醜状痕(7級、併合6級)につき、醜状によっても集金にあたり客と顔を合わせる際の支障や再就職をする幅が狭まるという点で労働能力を一部喪失したとして、14年間20%の労働能力喪失を認めた。」
(名古屋地裁判決平成18年10月4日 自動車保険ジャーナル1699・8)

「短大生(女・固定時21歳)の顔面線状痕(12級)につき、卒業後航空会社のグランドホステスの就職試験(面接)に不合格となり、その後他社のグランドホステスとして就職したが不合格に顔面線状痕が影響を与えた可能性があり、年齢、希望する職種、線状痕の形状から就労が制限されているとして、19年間14%の労働能力喪失を認めた。」
(大阪地裁判決平成11年10月15日 交通事故民事裁判例集32・5・1572)

「主婦兼女優・ホステス(固定時40歳)の肩甲部痛、上肢シビレ、頸部背部痛、三叉神経麻痺、歯牙障害(併合11級、眼瞼下垂は自賠責非該当)につき、頸部痛、眼瞼下垂、右上肢知覚障害は就労先の選択を狭め職務内容にも制限が伴い、殊に女優やホステスとしての稼働に眼瞼下垂は重大な支障を生じさせるとして、当初5年間は日額2万円余を基礎に35%、次の15年間は賃金センサス全労働者全年齢平均を基礎に20%、その後7年間は賃金センサス女性全年齢平均を基礎に14%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成16年3月23日 自動車保険ジャーナル1556・15)


 

◆逸失利益・高次脳機能障害


「大卒会社員(女・固定時36歳)の記銘力障害、笑い発作(併合7級)につき、復職後収入は増加しているが、配置転換のうえ係長職を解かれたこと、知能指数が96となったこと、仕事を継続できているのは勤務先の理解と本人の多大な努力(記憶力の低下を補うため頻繁にメモをとるなど)による部分が大きいこと、今後の昇進が相当に困難であることから、事故前年収533万円余を基礎に、31年間56%の労働能力喪失を認めた。」
(東京地裁判決平成17年7月25日 自動車保険ジャーナル1607・2)

「デザイン担当嘱託社員(男・固定時45歳)の高次脳機能障害(5級2号)、嗅覚障害(12級相当)、味覚障害(12級相当、併合4級)につき、事故後復職し、デザイン能力は低下しておらず会社も能力を高く評価していたが、記憶力や持続力の低下、協調性の問題などの人格変化によりトラブルが発生して退職していること、完全に就労不能とはいえず、嗅覚障害、味覚障害は労働能力に影響しないことから、85%の労働能力喪失を認めた。」
(京都地裁判決平成17年12月15日 自動車保険ジャーナル1632・5)

「大卒の建築請負業者(男・固定時53歳)の頭部外傷(脳震盪型)につき、現在の医療検査技術で脳の器質的損傷を示す異常所見が見当たらないからといって、事故後の記憶障害、易怒性、意欲低下等の症状が脳の器質的損傷によることを否定することは相当でないとして高次脳機能障害9級を認め(自賠責は不詳、1審は12級認定)、過去の売上変動過程、赤字経営等から賃金センサス男性大卒全年齢平均の60%(年額404万6820円)を基礎に、14年間35%の労働能力喪失を認めた。」
(大阪高裁判決平成21年3月26日 自動車保険ジャーナル1780・2)

「被害者(男・事故時62歳、自賠責は両膝の機能障害(各12級7号)、顔面醜状(12級13号)で併合9級)につき、高次脳機能障害が生じているとまでは認められないが、その疑いのある精神症状が生じているとして、他の後遺障害と相俟って全体として5級とし、59%の労働能力喪失を認めた。」
(神戸地裁判決平成14年3月28日 交通事故民事裁判例集35・2・433)



◆慰謝料・死亡、内縁関係にあった者等


「会社員(男・55歳・韓国籍)につき、約9年間事実上夫婦として暮らしていた内縁の配偶者に1000万円を認めた。」
(事故日平成7年6月17日 大阪地裁判決平成9年3月25日 交通事故民事裁判例集30・2・470)

「55歳で退職後無職、妹と二人暮らしの年金生活者(男・61歳)につき、本人分1900万円、妹300万円、生後間もなく被害者が引き取り父親代わりとして育ててきた姪100万円、合計2300万円を認めた。」
(事故日平成12年7月16日 大阪地裁判決平成14年3月15日 交通事故民事裁判例集35・2・366)

「女性(年齢不詳)につき、法定相続人とは慰謝料1100万円で示談が成立している事案において、民法711条により遺族固有の慰謝料請求権を取得すべき「子」とは実子ないし養子を指すものと解すべきではあるが、養子縁組を経ていない事実上の養子について同条の類推適用が肯定されるとして、内縁の養子2人各450万円、合計900万円を認めた。」
(事故日平成16年9月13日 大阪地裁判決平成19年3月29日 交通事故民事裁判例集40・2・479)

 

◆慰謝料・胎児の死亡等


「出産予定日の4日前の事故により死産したとして、800万円を認めた。」
(事故日平成1年7月26日 高松高裁酸欠平成4年9月17日 自動車保険ジャーナル994・2)

「事故の衝撃により妊娠2カ月の胎児が死亡したとして、150万円を認めた。」
(事故日平成2年8月13日 大阪地裁判決平成8年5月31日交通事故民事裁判例集29・3・830)

「妊婦(母)が受傷したことにより妊娠36週の胎児が死亡したとして、母700万円、父300万円を認めた。」
(事故日平成9年12月1日 東京地裁判決平成11年6月1日交通事故民事裁判例集32・3・856)

「25歳主婦(初産婦・なお、事故後、再び妊娠を望み排卵誘発剤のホルモン投与を受けているが、2年経過しても妊娠に至っていない状況にある)につき、正面衝突でシートベルトが食い込み、胎児(18週)が死亡したとして、350万円を認めた。」
(事故日平成11年7月8日 大阪地裁判決平成13年9月21日交通事故民事裁判例集34・5・1298)

「41歳主婦が受傷により妊娠12週未満の早期流産をしたとして、200万円を認めた。」
(事故日平成15年1月12日 大阪地裁判決平成18年2月23日交通事故民事裁判例集39・1・269)

◆慰謝料・後遺障害1級


「第五胸髄以下完全麻痺(1級)の大学生(男・21歳)につき、傷害分300万円のほか、本人分3000万円、父母各250万円の後遺障害分合計3500万円を認めた。」
(事故日平成10年12月10日 東京地裁判決平成13年7月31日 交通事故民事裁判例集34・4・990)

「高次脳機能障害(1級3号)と1眼摘出(8級1号、併合1級)の独身女性(事故時21歳・会社員)につき、生死の境をさまよい6回の大手術を受けたこと、若くして重大な傷害を負ったこと、外醜にも著しい醜状が残ったこと、両親の介護の精神的負担も極めて重いこと等を考慮して、傷害分480万円のほか、本人分3200万円、父母各400万円の後遺障害分合計4000万円を認めた。」
(事故日平成9年8月12日 東京地裁判決平成15年8月28日 交通事故民事裁判例集36・4・1091)

「植物状態(1級3号)の短大生(女・18歳)につき、傷害分500万円のほか、本人分3000万円、父母各300万円の後遺障害分合計3600万円を認めた。」
(事故日平成8年5月7日 福岡高裁判決平成18年4月11日 自動車保険ジャーナル1649・2)

「遷延性意識障害(1級1号)の被害者(男・70歳)につき、傷害分400万円のほか、本人分3000万円、妻200万円の後遺障害分合計3200万円を認めた。」
(事故日平成14年12月8日 札幌地裁判決平成18年11月10日 自動車保険ジャーナル1694・19)

「植物状態の単身独居者(女・固定時85歳)につき、後遺障害の内容、年齢、生活状況、本件事故の態様、介護の可能性を総合的に判断して、3000万円を認めた。」
(事故日平成16年9月24日 神戸地裁判決平成19年9月10日 自動車保険ジャーナル1737・22)



◆慰謝料・後遺障害2級


「事理弁識能力を欠く状態(2級3号)となった警備員(男・54歳・生活保護受給)につき、傷害分245万円、後遺障害分2500万円を認めた。」
(事故日平成13年12月12日 大阪地裁判決平成18年9月29日 自動車保険ジャーナル1697・21)

「高次脳機能障害(2級3号)の専門学校生・アルバイト(男・固定時20歳)につき、傷害分300万円のほか、本人分2600万円、母200万円、後遺障害分合計2800万円を認めた。」
(事故日平成12年10月22日 大阪地裁判決平成19年6月20日 自動車保険ジャーナル1705・7)

「高次脳機能障害(2級3号)で常時監視必要な中学生(男・固定時13歳)につき、傷害分350万円のほか、本人分2500万円、父母各300万円、後遺障害分合計3100万円を認めた。」
(事故日 平成14年7月7日 大阪高裁判決平成19年9月20日 自動車保険ジャーナル1762・5)

 
 

◆慰謝料・後遺障害3級


「右下腿部切断、右大腿部の醜状痕、左下肢の運動制限、左大腿部の醜状痕等(併合3級)の作業員(男・固定時20歳)につき、2000万円を認めた。」
(事故日平成9年6月5日 札幌地裁判決平成13年8月30日 判例時報1769・93)

「高次脳機能障害(5級2号)、複視(14級相当)・右眼視野欠損(13級2号)等の障害(併合13級相当)、そしゃく障害(10級2号)、骨盤骨変形(12級5号)、外貌醜状(7級12号)、左下肢の瘢痕(14級5号、併合3級)の主婦(固定時32歳)につき、2200万円を認めた。」
(事故日平成11年5月3日 東京地裁判決平成18年3月29日 交通事故民事裁判例集39・2・472)



◆慰謝料・後遺障害4級


「右上肢の機能障害(5級6号)、右肩関節脱臼に伴う右鎖骨の上方移転(12級5号、併合4級)の大学生(男・21歳)につき、体育大学に通い、将来高い運動能力の要求される仕事に就くことを希望していたが、事実上不可能になったこと等の事情に照らし、1700万円を認めた。」
(事故日平成12年9月10日大阪地裁判決平成17年12月9日 交通事故民事裁判例集38・6・1660)

「心房破裂による心房縫合、腹壁瘢痕ヘルニア、腸閉塞等(5級3号)、胸椎圧迫骨折(11級7号、併合4級)の主婦(女・固定時45歳)につき、胸部から下腹部にかけて縦走する傷痕はV字形状にくぼんでえぐれ、臍や腹部はでこぼこした様相を呈しており、通常の感受性のある女性なら精神的苦痛を感じずにはいられないほど痛ましい状態であるとして、傷害分440万円、後遺障害分1800万円を認めた。」
(事故日平成6年3月21日 仙台地裁判決平成19年2月9日自動車保険ジャーナル1740・19)

「左下肢喪失(4級5号)、右大腿醜状(14級5号、併合4級)の生活保護受給者(女・年齢不詳)につき、長男が退院後再入院まで3カ月程度介護したことなどを考慮し、傷害分353万円、後遺障害分1750万円を認めた。
(事故日平成16年4月5日 名古屋地裁判決平成20年6月25日 自動車保険ジャーナル1761・5)


 

◆慰謝料・後遺障害5級


「脊柱運動障害(6級5号)、右上肢機能障害(9級相当)、骨盤骨変形(12級5号)、右膝神経症状(14級10号、併合5級)のアルバイト(男・固定時23歳)につき、右上肢は一定程度の関節可動域は得られているが動きが遅く、ぎこちない等可動域の数値のみでは評価し尽くせない障害が残存しているとして1450万円を認めた。」
(事故日平成6年11月25日 大阪地裁判決平成14年9月27日 自動車保険ジャーナル1478・9)

「高次脳機能障害(5級2号)の高校生(男・固定時19歳)につき、傷害分350万円、後遺障害分1600万円を認めた。」
(事故日平成12年8月21日 前橋地裁高崎支部判決平成18年9月15日 自動車保険ジャーナル1688・17)

「高次脳機能障害(5級2号)の会社員(男・固定時56歳)につき、傷害分288万円のほか、顕著な認知障害、人格変化が生じ、随時の付添、看視、声かけが必要になった後遺障害の内容程度を考慮し、後遺障害分1500万円を認めた。」
(事故日平成15年9月26日 名古屋地裁判決平成19年12月7日 交通事故民事裁判例集40・6・1578)

「頭部外傷後の精神・神経系統の障害(5級2号)の事故時25歳生物学的には女性、心理的には男性の性同一性障害者につき、後遺障害のため性別適合手術を断念せざるを得なくなったこと、念願の職種であった建設業等に就くことも困難として、逸失利益において賃金センサス男性高卒全年齢平均の8割を基礎に労働能力喪失率79%を41年間認めた上で、嗅覚脱出、味覚障害、難聴も考慮し、1700万円を認めた。」
(事故日平成15年8月17日 岡山地裁倉敷支部判決平成20年10月27日 交通事故民事裁判例集41・5・1362)

 
 

◆慰謝料・後遺障害6級


「右手五指用廃(7級7号)、鎖骨変形(12級5号)、外貌醜状(14級11号、併合6級)の3級海技士(機関)の船員(男・固定時23歳)につき、1300万円を認めた。」
(事故日平成10年3月19日 岡山地裁判決平成10年3月19日 交通事故民事裁判例集31・2・385)

「外貌醜状(7級12号)、右眼球障害(12級1号、併合6級)の生保外務員(女・36歳)につき、逸失利益において労働能力喪失率40%を20年間、同14%を11年間認めた上で、傷害分200万円、後遺障害分として認定外の歯牙障害も考慮し1300万円を認めた。」
(事故日平成11年6月17日 名古屋地裁判決平成14年8月14日 自動車保険ジャーナル1466・2)

「高次脳機能障害(7級4号)、左鎖骨の変形障害(12級5号)、左耳難聴(12級相当、併合6級)の、早期退職して転職した直後の非常勤嘱託職員(男・固定時55歳)につき、本格的な再就職、長らく単身赴任のため別居していた家族との円満な同居生活、趣味など、勤務先を退職していたときに考えていた希望のほとんど全てをかなえられなくなったこと等から、傷害分150万円のほか、本人分1300万円、妻100万円、後遺障害分1400万円を認めた。」
(事故日平成15年1月18日 仙台地裁判決平成20年3月26日 自動車保険ジャーナル1734・6)



 

◆慰謝料・後遺障害7級


「脳挫傷、右不全麻痺、知能低下(7級)の兼業農家(男・60歳)につき、傷害分300万円、後遺障害分1100万円を認めた。」
(事故日平成2年12月18日 東京地裁判決平成8年2月28日 東京高裁判決平成9年4月24日交通事故民事裁判例集30・2・349)

「鼻から頬部にかけて長さ約80mm、幅約2mmの白色脱色と線状痕、鼻軟骨欠損(知覚異常の神経症状を含めて7級12号)、下腿痛(14級10号、併合7級)の海上自衛官(女・固定時27歳)につき、逸失利益を認めた上で、後遺障害分1100万円を認めた。」
(事故日平成7年11月26日 長崎地裁大村支部平成17年10月28日 交通事故民事裁判例集38・5・1493)

「左上肢のRSD(反射性交感神経性筋ジストロフィー労働能力喪失率56%)のシステムエンジニア(男・固定時36歳)につき、現在の状態を維持するために今後も治療を続けなければならないことなどから、傷害分120万円、後遺障害分1200万円を認めた。」
(事故日平成14年10月5日 東京地裁判決平成19年7月23日 交通事故民事裁判例集40・4・919)

「顔面醜状及び疼痛(7級12号相当)の旅行会社添乗員(女・固定時27歳)につき、逸失利益において労働能力喪失率10%を10年間認めた上で、傷害分120万円のほか、加害者が酒気帯び、制限速度25㎞超過で追突しそのまま現場から立ち去ったという悪質性、被害者が20歳代の未婚の女性であり高校生の頃から希望していた海外旅行添乗員になることを断念したこと等を斟酌し、後遺障害分1250万円を認めた。」
(事故日平成18年6月29日 東京地裁判決平成20年7月22日 交通事故民事裁判例集41・4・935)




◆慰謝料・後遺障害8級


「右眼失明(8級)、頭部手術痕(6.5㎝×19.5㎝)等の被害者(男・10歳)につき、1000万円を認めた。」
(事故日平成1年7月9日 東京地裁判決平成4年1月21日 交通事故民事裁判例集25・1・35)

「右大腿部開放骨折、右膝前後十字靭帯断裂で症状固定までの2170日間に415日入院し、1254日通院して、右膝関節障害(10級)、右足関節障害(12級)、右下肢醜状障害(12級、併合8級)の被害者(女・44歳)につき、傷害分440万円、後遺障害分950万円を認めた。」
(事故日平成4年4月29日 東京地裁判決平成14年3月22日 交通事故民事裁判例集35・2・385)

「人口肛門、骨盤骨変形等(併合8級)のアルバイト(女・19歳)につき、女性でありながら生涯にわたり人口肛門を装着しなければならないこと、骨盤骨の変形により通常分娩が困難であること、腹部等に複数の醜状痕を残していること等から、傷害分280万円、後遺障害分1200万円を認めた。」
(事故日平成9年9月30日 大阪地裁判決平成17年1月31日 交通事故民事裁判例集38・1・187)

「足指の機能障害(9級15号)、左足瘢痕(12級13号、併合8級)の小学生(女・事故時11歳)につき、後遺障害の内容が多岐にわたり、かつ重篤で経過観察や継続治療を要し、今後も手術を繰り返す可能性があること、醜状のため素足になることが困難であることなどを考慮して、傷害分368万円、後遺障害分996万円を認めた。」
(事故日平成16年7月23日 大阪地裁判決平成19年12月14日 自動車保険ジャーナル)

 

 

◆慰謝料・後遺障害9級


「右足関節運動制限、左足関節運動制限等(併合9級)のスナック経営者(女・41歳)につき、傷害分250万円、後遺障害分700万円を認めた。」
(事故日平成4年3月1日 京都地裁判決平成8年4月10日交通事故民事裁判例集29・6・1899)

「右股関節、右膝関節及び右足関節の可動域制限(準用10級)、右足関節の変形(12級8号)、右下肢の短縮障害(13級9号)、右下肢の醜状痕・植皮術後瘢痕(12級、併合9級)の会社代表者(男・症状固定時58歳)につき、750万円を認めた。」
(事故日平成13年8月5日 名古屋地裁判決平成18年12月13日 自動車保険ジャーナル1710・17)

 
 

◆慰謝料・後遺障害10級


「左足関節の機能障害、成長障害、左足関節部の植皮による痕跡、採皮部・左肩甲部の瘢痕等(10級11号)の被害者(男・8歳)につき、傷害分140万円、後遺障害分560万円を認めた。」
(事故日平成5年5月17日 神戸地裁判決平成9年1月22日 交通事故民事裁判例集30・1・73)

「複視(10級相当)の看護師(女・症状固定時50歳)につき、両眼の麻痺の場合には運動能力の喪失に与える影響は大であるとして、800万円を認めた。」
(事故日平成15年6月18日 東京地裁判決平成18年12月25日 自動車保険ジャーナル1714・2)

 
 

◆慰謝料・後遺障害11級


「下顎神経障害(12級)、歯牙欠損(12級)、外貌醜状(12級、併合11級)の会社員(女・27歳)につき、未婚女性として多大な苦痛を受けることを考慮して500万円を認めた。」
(事故日平成9年1月13日 東京地裁判決平成13年8月7日 交通事故民事裁判例集34・4・1010)

「歯牙障害(加重後の等級13級)、頸部痛や背部痛(14級10号)、肩甲部痛や上肢シビレ等(12級12号)、顔面の三叉神経麻痺(12級12号、併合11級)の主婦兼女優・ホステス(女・事故時38歳)につき、後遺障害の内容、眼瞼下垂などによりホステス業及び女優としての活動が困難になったこと、心理的なストレス、事故後の加害者側の対応等を考慮して500万円を認めた。」
(事故日平成5年10月1日 東京地裁判決平成16年3月23日 自動車保険ジャーナル1556・15)

「頭部外傷後の記憶障害(12級12号)、複視(12級相当、併合11級)の勤務医(男・症状固定時37歳)につき、傷害の内容、これに伴う日常生活への影響、本件事故の態様等を考慮して500万円を認めた。」
(事故日平成15年1月3日 東京地裁判決平成18年9月27日 交通事故民事裁判例集39・5・1321)

「脊柱変形(11級7号)、頸椎捻挫に伴う頸肩痛(14級9号、併合11級)の二輪車のA級ライセンスを有し優勝歴もあるドラッグレースのプロレーサー兼会社員(男・固定時32歳)につき、事故後プロレーサーとして活動できなくなったことも考慮し、レーサーとしての逸失利益については労働能力喪失率100%を8年間、会社員としての逸失利益は10%を35年間認めた上で、傷害分124万円、後遺障害分500万円を認めた。」
(事故日平成17年9月4日 東京地裁判決平成21年5月26日 自動車保険ジャーナル1796・8)



 

◆慰謝料・後遺障害12級


「軽度四肢麻痺(12級)の肉体労働者(男・固定時38歳)につき、67歳まで労働能力20%の喪失、傷害分145万円、後遺障害分360万円を認めた。」
(事故日平成8年4月18日 大阪地裁判決平成11年2月23日 自動車保険ジャーナル1324・3)

「左腕神経損傷(自賠責は12級12号)の理容店兼美容院経営(男・固定時29歳)につき、理容・美容技術を十分に駆使し得ない状態となったとして労働能力35%の喪失、後遺障害分616万円を認めた。」
(事故日平成8年9月18日 仙台地裁判決平成13年6月22日 自動車保険ジャーナル1430・5)

「左膝靭帯損傷等で関節機能障害(12級7号)の会社員兼主婦(女・固定時36歳)につき、傷害分230万円、後遺障害分350万円を認めた。」
(事故日平成9年12月11日 京都地裁判決平成14年2月21日 自動車保険ジャーナル1452・2)

「左膝疼痛(12級12号)の主婦(固定時68歳)につき、事故の2年4カ月前の左膝関節置換術にて8級7号の既往症を有していたものの、事故当時、同手術によって膝の疼痛の苦しみから解放されていたにも関わらず、再び左膝関節の疼痛に苦しめられるようになったこと等を考慮して、傷害分200万円、後遺障害分300万円を認めた。」
(事故日平成9年9月10日 京都地裁判決平成14年12月12日 自動車保険ジャ^ナル1497・6)

「右足関節機能障害(12級)の主婦兼警備員(44歳)につき、PTSDの主張は認められないが、事故後不安障害を発症し右足関節障害の症状固定後も家事等に制限が生じたことを考慮し、傷害分170万円、後遺障害分380万円を認めた。
(事故日平成13年4月20日 京都地裁判決平成16年6月7日 自動車保険ジャーナル1571・8)

「足関節障害(12級)の板前(男・固定時51歳)につき、立位で行う職業に支障があるとして350万円を認めた。」
(事故日平成12年7月30日 東京地裁判決平成16年11月17日 自動車保険ジャーナル1586・20)

「右股関節機能障害、右股関節痛(12級)の主婦(固定時58歳)につき、傷害分280万円のほか、後遺障害の程度が10級に近いものであること、将来人工骨頭置換術を余儀なくされる可能性があることも考慮して後遺障害分550万円を認めた。」
(事故日平成15年7月19日 千葉地裁判決平成20年6月23日交通事故民事裁判例集41・3・740)




◆慰謝料・後遺障害13級


「労働能力に影響のない蝶骨障害、左手の障害(13級6号)の主婦(67歳)につき、約30年間にわたってやっていた能管(能の舞台等で演奏する横笛)が全く出来なくなり小鼓が長時間続けられなくなったとして、傷害分210万円、後遺障害分300万円を認めた。
(事故日平成11年5月30日 札幌地裁判決平成13年11月21日 自動車保険ジャーナル1441・14)

「左手ひとさい指欠損等(13級相当)の会社員・メカニック(男・固定時26歳)につき、左手ひとさし指の激痛、左足の痛みで立ち作業が困難となりメカニックを断念したことに鑑み、傷害分70万円、後遺障害分200万円を認めた。」
(事故日平成14年10月5日 大阪地裁判決平成18年1月12日 自動車保険ジャーナル1669・2)

「頸部痛(14級10号)、視力低下(13級1号、併合13級)の主婦(女・固定時51歳)につき、220万円を認めた。」
(事故日平成12年11月21日 名古屋地裁判決平成19年4月25日 自動車保険ジャーナル1714・6)



 

◆慰謝料・後遺障害14級


「右眼球運動障害による複視(14級相当)の漁師(男・65歳)につき、傷害分200万円、後遺障害分160万円を認めた。」
(事故日平成9年4月2日 大阪地裁判決平成13年3月15日交通事故民事裁判例集34・2・393)

「左上肢の知覚障害等(14級10号)の石工(男・38歳)につき、巧緻な手作業と集中力を要求される仕事の特殊性、唯一の生業としてきた石工の仕事に復帰することが困難な状況に置かれていること等から180万円を認めた。」
(事故日平成10年7月20日 東京地裁判決平成13年8月29日 交通事故民事裁判例集34・4・1133)

「膝関節と頸椎の神経症状(各14級10号、併合14級)を残す会社員(男・固定時32歳)につき、事故が退職に原因を与えたことは否定できないこと、被害者に落ち度はないこと、症状固定後も自己負担で接骨院に通っていること、加害者の事故後の対応には誠実さを欠いていたこと等を考慮して250万円を認めた。」
(事故日平成7年9月14日 東京地裁判決平成16年2月27日交通事故民事裁判例集37・1・240)

「追突されて左手に振戦(14級10号)が発症、手術ができなくなったとする眼科医(公務員)(女・事故時30歳)につき、研究職の眼科医に転向せざるを得なくなったことにより減収が生じていること等を考慮し、逸失利益(12%・10年)のほか、後遺障害分210万円を認めた。」
(事故日平成12年3月9日 甲府地裁判決平成17年10月12日自動車保険ジャーナル1640・16)

「腰部痛(14級10号)の理容師(女・事故時21歳)につき、症状は12級12号に相当する程度とまでは認められないとしたが、被害者の腰椎に関する他覚的所見が退行性の変性と確定的に診断することはできないこと、腰痛が少なくとも本件事故による受傷以後に顕在化したものであること等から、傷害分156万円、後遺障害分165万円を認めた。」
(事故日平成13年5月28日 京都地裁判決平成18年6月9日自動車保険ジャーナル1663・19)

「腰痛・臀部痛等(14級に該当と認めた)の消化器外科勤務医(男・年齢不明)につき、受信後、長時間の手術や検査が困難となるなど就業上相当の支障が生じ消化器外科医から形成外科医に転職し、趣味のマラソンでも以前より劣った成績しか残せず運動能力回復のための相当の努力を行っていること等から、傷害分180万円、後遺障害分180万円を認めた。」
(事故日平成15年10月19日 名古屋地裁判決平成21年1月23日 自動車保険ジャーナル1796・2)

「右下肢の醜状痕(14級5号)、背中の醜状痕(等級非該当)の児童(女・9歳)につき、逸失利益において労働能力喪失率5%を就労後5年間認めた上で、醜状について心ない言葉を受けることが多いなど、種々の支障が生じていることから250万円を認めた。」
(事故日平成17年8月8日 横浜地裁判決平成21年4月23日自動車保険ジャーナル1794・19)




◆慰謝料・後遺障害14級に至らない後遺障害


例えば、3歯以上歯科捕綴の場合は自賠責14級であるが2歯の場合は14級に至らないが、それに応じた後遺障害慰謝料が認められることがある。

「顔面醜状(下顎部に長さ14㎝、幅0.5㎝の瘢痕)の会社員(女・固定時20歳)につき、自賠責保険12級14号の認定基準に達しないとしても、瘢痕の部位、大きさ、色彩や被害者の性別、年齢、職業等の諸般の事情を総合して判断し、傷害分130万円、後遺障害分200万円を認めた。」
(事故日平成4年8月26日 東京地裁判決平成7年1月27日交通事故民事裁判例集28・1・95)

「外傷性頸部症候群、バレー・リュー症候群を含む障害につき、自賠責所定の後遺障害とは認めがたいが相応の後遺障害は残存するとして、傷害分116万円、後遺障害分40万円を認めた。」
(事故日平成4年5月10日 大阪地裁判決平成7年3月30日交通事故民事裁判例集28・2・572)

「右膝関節の神経症状(14級10号)、左手関節神経症状(14級相当)、左眉毛上のこぶ状瘢痕及び右膝外側の線上痕(等級非該当)の自営業者(女・29歳)につき、これらの醜状痕は慰謝料で考慮するとして180万円を認めた。」
(事故日平成7年2月19日 大阪地裁判決平成11年10月25日 自動車保険ジャーナル1349・3)

「14級に至らない頸部痛、跛行、左股関節痛等の運送業勤務(男・年齢不明)につき、労働能力喪失まで認めるに足りる証拠はないとしたが、これが日常生活や社会復帰を躊躇させ、将来への不安を抱かせる要因ともなっている点を斟酌し、他方では既往症(左変形股関節症)が影響していることも考慮して100万円認めた。」
(事故日平成6年1月16日 東京地裁判決平成12年1月19日交通事故民事裁判例集33・1・59)

「上口唇部に約1㎝の隆起、疼痛の航空会社契約社員(女・年齢不明・独身)につき、自転車対歩行者の事故であったことから等級の認定はないが、独身女性であり容姿が重視される性質の職務についていること、職場の同僚からも外貌の変化を指摘されるなどして多大な精神的苦痛を受けていることを考慮して100万円を認めた。」
(事故日平成8年9月13日 東京地裁八王子支部平成13年9月14日 交通事故民事裁判例集34・5・1268)

 
 

◆慰謝料の増額事由


加害者に故意もしくは重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに赤信号無視等)または著しく不誠実な態度等がある場合

①死亡事例

ア 一家の支柱
「会社代表取締役(男・61歳)につき、加害者が忘年会で飲酒後酩酊しながら自動車で帰宅する途中、高速道を一般道と錯覚して転回して逆走するという常軌を逸した運転行為により事故を発生させたこと、事故後残された被害者の病弱な妻が自殺を図ったこと、謝罪意思の表明の在り方等において加害者に配慮の欠けた面があったこと等を考慮し、3600万円を認めた。」
(事故日平成12年12月2日 東京地裁判決平成15年3月27日 交通事故民事裁判例集36・2・439)

「被害者(男・54歳)につき、加害者が酒酔い運転で車両を対向車線に進入させたため事故が生じたこと、事故後形態電話をかけたり小便をしたり煙草を吸ったりするだけで救助活動を一切しなかったこと、捜査段階で自らの罪を逃れるため被害者がセンターラインを先にオーバーしてきたと供述したこと等を考慮し、本人分2600万円、妻500万円、母500万円、合計3600万円を認めた。」
(事故日平成14年5月4日 東京地裁判決平成16年2月25日自動車保険ジャーナル1556・13)

「土木工事業者(男・37歳)につき、加害者両が無免許・飲酒・居眠運転により、対向車線に進入して被害車両と衝突し、加害車両運転者、同乗者とも事故後救助しないのみならず、運転者は同乗者に対し運転者について虚偽の供述を求め、自分は運転していないなど虚偽供述を繰り返したこと、長男も死亡し妻も娘も重傷を負うなど一家全体に重大な結果が生じていること等から、本人分2500万円、妻300万円、子3人各200万円、父母各100万円、合計3600万円を認めた。」
(事故日平成15年8月10日 さいたま地裁判決平成19年11月30日 交通事故民事裁判例集40・6・1558)


イ 母親、配偶者

「有職(公務員)主婦(30歳)につき、横断歩道上の歩行中の事故で、事故後帝王切開により分娩した後、死亡したことを勘案し、夫1500万円、子2人各750万円、父母各100万円、合計3200万円を認めた。」
(事故日平成1年7月19日 横浜地裁判決平成4年1月30日 自動車保険ジャーナル980・2)

「被害者(女・66歳)につき、交渉段階で損保担当者が被害者の過失割合30%を主張したこと、本訴で被告が被害者40%の過失相殺を主張したことが過度の過失相殺の主張であり、相当な権利主張の範囲を著しく逸脱するものとして、慰謝料算定の一事由として考慮し、2400万円を認めた。(裁判所は加害者の過失100%を認定した。」
(事故日平成8年10月1日 神戸地裁判決平成10年6月4日 判例時報1678・111)

「有職主婦(女・62歳)につき、極めて悪質な運転態度(飲酒、制限速度を相当上回る)で一家の精神的支柱を死亡させたとして2700万円を認めた。」
(事故日平成11年1月18日 津地裁熊野支部判決平成12年12月26日 判例時報1763・206)

「主婦兼アルバイト(女・43歳)につき、加害者が多量に飲酒し正常な運転が困難な状態で加害車両を走行させ、仮眠状態に陥って本件事故を引き起こした悪質さ、運転動機の身勝手さ、3人の子の成長を見届けることなく生命を奪われた被害者の無念さ等から、本人分2700万円、夫200万円、子3人各100万円、合計3200万円を認めた。」
(事故日平成14年12月9日 東京地裁判決平成18年10月26日交通事故民事裁判例集39・5・1492)

「主婦(女・35歳)につき、若年の娘3名を残して突然この世を去らなければならなかった無念さ、電柱で頭部を強打してほぼ即死状態であったことから察せられる肉体的苦痛の大きさ、加害者が酒酔い運転をしていた上、制限速度(時速40㎞)を大幅に超える速度(時速78㎞)で走行していたこと等から、本人分2400万円、夫及び子3人各100万円、合計2800万円を認めた。」
(事故日平成19年4月12日 大阪地裁判決平成20年5月29日交通事故民事裁判例集41・3・658)

 

ウ 独身の男女

「大学生(男・19歳)につき、加害者が故意に匹敵する信号無視で死亡させたにもかかわらず、責任を被害者になすりつけようとし虚偽の供述を重ね、救護しなかったことを考慮し、本人分2500万円、父母各250万円、合計3000万円を認めた。」
(事故日平成12年6月13日 東京地裁判決平成14年4月18日 判例時報1784・100)

「高校生(男・17歳)につき、加害者が飲酒のうえ時速100㎞以上の速度で運転し前方不注意で被害車両に追突したこと等から、本人分2000万円、父母各350万円、姉2人各150万円、合計3000万円を認めた。」
(事故日平成10年8月17日 東京高裁判決平成15年2月13日 交通事故民事裁判例集36・1・6)

「独身会社員(男・34歳)につき、加害者が被害車両に非常識な割込みをされたと立腹し、報復のため至近距離を保ったまま約400mにわたって加害車両で煽り行為を行い、被害者がほぼノーブレーキで先行者へ衝突するという事故を招いたこと等から、3000万円を認めた。」
(事故日平成14年12月7日 大阪地裁判決平成18年8月31日 交通事故民事裁判例集39・4・1215)

 

エ 子供・幼児等

「姉妹(3歳と1歳)につき、加害者が呼気1リットルあたり0.63㎎の飲酒運転で縁石にぶつかりながら蛇行するなどし、料金所の職員から注意されても無視して運転を続行し、サービスエリアで更に持ち込んだウィスキーを飲酒する等して、渋滞減速した被害車両に追突して炎上させ、被害車両に閉じこめられた被害者ら姉妹を焼死させた等の事情を考慮して、各3400万円(本人2600万円、父母各400万円)、合計6800万円を認めた。」
(事故日平成11年11月28日 東京地裁判決平成15年7月24日 交通事故民事裁判例集36・4・948)

「女児(3歳)につき、保育園の園舎屋上に設置された駐車場から加害者が運転を誤ったために加害車両が転落し、園庭にいた被害者がその下敷きとなって死亡した事故で、受傷内容も痛ましいものであったことなどを考慮して本人分2400万円、園の配慮を欠いた対応や加害者の反省が疑われる変貌等を考慮して、父母各300万円、合計3000万円を認めた。」
(事故日平成14年9月18日 名古屋地裁判決平成17年3月29日 交通事故民事裁判例集38・2・509)

「中学生(女・14歳)につき、加害者が刑事裁判において遺族から常軌を逸した対応と評価されてもやむを得ないような訴訟態度を示したこと、遺族に対して真摯な反省ないし謝罪を示していないこと等から、本人分2600万円、父母各200万円、合計3000万円を認めた。」
(事故日平成14年5月28日 大阪高裁平成19年4月26日自動車保険ジャーナル1715・2)

「中学生(女・12歳)につき、加害者が会社から取り外しの指示があったにもかかわらず大型貨物車の助手席ドアのガラス部にスモークフィルムを貼って左方視界を悪化させていたなど職業運転手としての安全運転に対する意識が欠如していたこと、慰藉の措置を講じておらず不誠実であると評価されても致し方ないことから、本人分2000万円、父母各400万円、弟200万円、合計3000万円を認めた。」
(事故日平成16年9月18日 千葉地裁判決平成19年10月31日 交通事故民事裁判例集40・5・1423)

 

 

②傷害事例

「加害者において、刑事裁判で治療費は全額支払うと述べたのに、原告の父親が示談書に押印しなかったことから治療費を打ち切ったこと、酒気帯び運転につき刑事裁判で有罪が確定しているのに本裁判で否認していることなどを考慮して、傷害分550万円、女性の神経症状、大腿部の著しい醜状痕の後遺障害分350万円を認めた。」
(事故日平成1年12月17日 東京地裁判決平成6年1月25日交通事故民事裁判例集27・1・113)

「加害者に飛び出しを咎められたが、加害者が酒に酔っていたのでこれを無視して発進した保母(23歳)を、加害者が車間距離をおかずに追跡して追突した事案で、追突は車間距離不保持による過失が原因とし、危険な態様の追跡で被害者に多大な恐怖感を与えたとして、この点について特に25万円を認め(傷害分50万円、通院28日)、同乗者(23歳・保母)にも15万円の慰謝料を認めた。」
(事故日平成4年5月24日 大阪地裁判決平成7年12月14日自動車保険ジャーナル1164・2)

「左膝前顆部内反変形等(12級)の美容師見習い(女・固定時22歳)につき、加害者が、事故後免許取消しを恐れて救護せずに逃走し、加害車両の修理や廃車手続きをとるなど証拠隠滅工作を行ったことを考慮し、入院分(請求額142万円)を含めて500万円を認めた。」
(事故日平成6年8月20日 大阪地裁判決平成9年12月11日交通事故民事裁判例集30・6・1737)

「急性硬膜下血腫、脳挫傷等による精神的症状(9級10号)の工務店員(男・固定時32歳)につき、受傷3カ月後から症状照会を繰り返し、債務不存在確認を求める調停の申立や本訴を提起した加害者の反応が、事故により精神的症状を生じていた被害者にさらに深刻な影響を与えた可能性があるとして、傷害分(入院66日・通院期間約3年・実通院日数不明・月1~3日の割合で通院)と後遺障害分合計850万円を認めた。」
(事故日平成7年7月25日 神戸地裁判決平成12年3月30日 交通事故民事裁判例集33・2・667)


「事故により全治1週間の被害を受け1日通院で全治したが、事故直後、加害者が被害者を現場に放置したまま走り去ったため、傷をおして追跡し立ち会い等をした被害者につき、20万円を認めた。」
(事故日平成7年2月3日 神戸地裁判決平成12年9月14日交通事故民事裁判例集33・5・1515)

「頸椎捻挫、両膝打撲で入院9日間、通院期間146日間、(実日数15日)の傷害を負ったラーメン店手伝い(男・19歳)につき、加害者が過失の存在を強く争い治療費を含めて全く損害の填補がされていないこと、加害車両の修理に関しても、加害者は被害者の要求にもかかわらず被害者に損傷個所の確認をさせたり損傷個所の写真を送付したりすることなく一方的に修理を終えてしまったこと等を考慮して65万円を認めた。」
(事故日平成6年12月13日 東京地裁判決平成13年5月29日交通事故民事裁判例集34・5・29)

「下顎挫傷、左肩鎖関節脱臼、左肩甲骨骨折、右恥骨骨折等で入院34日、通院341日間、咀嚼機能障害(10級2号)、左肩関節の機能傷害(10級10号)、左肩鎖関節亜脱臼に伴う鎖骨の変形障害(12級5号、併合9級)の、国際資格を取得して今後も従事する予定であったエステティシャン(女・事故当時34歳)につき、仕事に就くことがもはや不可能になったことに加え、加害者が本件事故当時酒気帯び運転をしたうえ救護義務及び報告義務違反をしたこと等から、後遺障害分1500万円を認めた。」
(事故日平成13年6月20日 東京地裁判決平成18年12月2日交通事故民事裁判例集39・6・1788)

 


被害者の親族が精神疾患に罹患した場合

「スナック勤務(女・24歳・独身)の死亡事故につき、本人分2000万円、父100万円、事故によって被害者を失ったことを契機としてPTSDに罹患した母300万円、合計2400万円を認めた。」
(事故日平成9年10月16日 大阪高裁判決平成14年4月17日交通事故民事裁判例集35・2・323)

「男児(生後6カ月)の死亡事故につき、加害者の無免許運転が事故発生の大きな原因であること、不妊治療を受けてようやく出生した子であること、乳母車に乗った子が飛ばされ道路に投げ出される光景を直
接目撃した母親がPTSDと診断され今後も治療を継続する必要があること等を考慮し、本人分2100万円、父300万円、母600万円、合計3000万円を認めた。」
(事故日平成11年4月1日 名古屋地裁判決平成14年12月3日交通事故民事裁判例集35・6・1604)

「中学生(男・12歳)の死亡事故につき、両親が極めて大きい精神的苦痛を受け、母は現在精神科へ通院していること、加害者が脇見運転という重大な過失により被害者を死亡させながら刑事裁判において不合理な弁解に終始したこと等の事情を考慮し、本人分2000万円、父150万円、母350万円、合計2500万円を認めた。」
(事故日平成11年7月26日 神戸地裁判決平成15年3月28日交通事故民事裁判例集36・2・459)

 

高齢者等

「鍼灸治療院勤務兼年金生活(男・65歳)につき、加害原付が前照灯の点灯しない整備不良であったこと、歩行者・自転車専用道路を慢然と時速40~50㎞で走行したこと、衝突後、被害者の救護も事故発生の報告もせず、事故の発覚をおそれて事故現場から立ち去ったこと、その後約5カ月間にわたって加害者が誰なのか分からなかったこと等から、2800万円を認めた。」
(事故日平成13年9月13日 大阪地裁平成18年2月14日交通事故民事裁判例集39・1・105)

「小学生(男・8歳)の死亡事故につき、不起訴処分に対し両親が真相究明を求め粘り強い努力をした結果、全容が解明されるに至ったとして、本人分2200万円、母(父は相続放棄)400万円、合計2600万円を認めた。」
(事故日平成9年11月28日 東京地裁判決平成13年3月15日 交通事故民事裁判例集34・2・384)

「会社員(女・年齢不明)につき、追突事故の後、妊娠2週目に妊娠に気づかずレントゲン検査を受け人工妊娠中絶を余儀なくされたことの精神的打撃が大きかったとして、通院期間55日だが100万円を認めた。」
(事故日平成4年1月9日 大阪地裁判決平成6年1月19日 交通事故民事裁判例集27・1・62)

「右肘開放骨折、右前腕皮膚壊死等(7級相当)の主婦(48歳)につき、症状固定までの傷害分300万円のほかに、症状固定後3年間の通院分50万円、後遺障害分1000万円を認めた。」
(事故日平成9年6月1日 大阪地裁判決平成13年1月25日 交通事故民事裁判例集34・1・61)

「左関節機能障害(8級7号)、顔面醜状(7級12号)、左大腿部醜状(14号5号)、採骨による骨盤変形(12級5号、併合5級)の主婦(固定時49歳)につき、症状固定まで4年半を要し3年以上の入院を強いられたこと、結果として配偶者と離婚せざるを得なかったことなどから、1166日入院し約15カ月半通院(実日数90日)した傷害慰謝料600万円を認めた。」
(事故時平成6年5月31日 東京地裁判決平成14年4月16日 交通事故民事裁判例集35・2・518)

 

 

◆物損事故・修理費


修理が相当な場合、適正修理費相当額が認められる。

(1)修理の範囲

「金メッキを施したバンパー(メルセデス・ベンツ)が損傷した事案につき、その取替費用は相当因果関係のある損害だが、バンパーに金メッキを施すことは無用に損害を拡大させるものであるとして過失相殺の法理により金メッキ修理代金の5割を減額し、7万4000円を認めた。」
(東京高裁判決平成2年8月27日 判例時報1378・68)

「車両事故で、部品取替えの方が経済的である等の理由がない以上、板金修理(3万2540円)によるべきであるとされた。」
(岡山地裁判決平成6年9月6日 交通事故民事裁判例集27・5・1197)

 

(2)修理未了の場合

「修理がされておらず、また、今後も修理する可能性がないとしても、現に損傷を受けている以上、損害は既に発生しているとして修理相当額を損害として認めた。」
(大阪地裁判決平成10年2月24日 自動車保険ジャーナル1261・2)

 

(3)リース車両の場合

「名目上の所有者はリース会社にあるが、修理・保守の義務はユーザーが負担することになっていることから、修理費用をユーザーの損害と認めた。」
(東京地裁判決平成21年12月25日 自動車保険ジャーナル1826・39)

 

 

◆物損・経済的全損の判断


修理費が、車両時価額に買替諸費用を加えた金額を上回る場合には、経済的全損となり、買替差額が認められ、下回る場合には修理費が認められる。

「車両時価31万6000円の大型貨物車につき、関東陸運局が事業用大型貨物自動車の代替について車令が概ね6年を超えれば登録不可能としていることから、初度登録から6年を経過していない同種同等の車両の調達価格300万円と修理費を対比しいずれか低い方を車両損害とするのが相当とし、調達価格が修理費を下回ることはないとして修理費202万9790円を認めた。」
(横浜地裁平成1年6月26日 判例時報1350・96)

「修理費の額と比較すべき車両全損を前提とする評価額は、車両時価額のみの限定すべき理由はなく、これに全損を前提とした場合に損害と認められるべき車検費用、車両購入諸費用等を含めた額とすべきであり、修理費の額がこれらの合計額を下回る場合は、経済的全損と判断することはできないとした。」
(東京地裁判決平成14年9月9日 交通事故民事裁判例集35・6・1780)

「初度登録から11年目の乗用車(車種不明)につき、時価額は新車価格の1割の25万円、修理費は39万8870円であるが、経済的全損とすると自動車税、登録費用、納車整備費用等の買替費用合計11万4615円が必要となるので、修理費が経済的全損とする場合を著しく上回るとは言えず、修理相当額をもって損害とした。」
(名古屋地裁判決平成15年2月28日 自動車保険ジャーナル1499・17)




◆物損・買替差額


物理的または経済的全損、車体の本質的構造部分が客観的に重大な損傷を受けてその買替をすることが社会的通念上相当と認められる場合には、事故時の時価相当額と売却代金の差額が認められる。
(最高裁判決昭和49年4月15日 交通事故民事裁判例集7・2・275)

「ベンツ600を修理せず新車に買い替えた場合につき、事故当時の時価額と事故後の時価額の差額722万8000円は車両損害と認めず、修理費509万円余を車両損害とし、ベンツの安全性をどの程度重視する(どの程度安全性に不安を感じる)かはもっぱら主観的な問題であるから買替の費用を加害者に負担させるのは相当とは言えないとした。」
(東京地裁判決平成11年9月13日 交通事故民事裁判例集32・5・1378)

「価格722万円余の新車ベンツが引渡しの20分後に追突された場合(未修理状態での下取価格は最高でも130万円)につき、既に一般車両と同様に公道において通常の運転利用に供されていた以上、引渡し直後だったことは、新車の買い替えを肯認すべき特段の事情とまではいえないとして、新車の買替を前提とした車両損害の請求は認めず、修理費339万円余をもって車両損害とすべきであるとした。」
(東京地裁判決平成12年3月29日 交通事故民事裁判例集33・2・633)

「初度登録後20日で約300㎞しか走行していない外国製大型自動二輪車(フェニックス)につき、車体の本質的構造部分が客観的に重大な損傷を受けてその買替をすることが社会通念上相当と認められるときには該当しないとして、新車購入費用(544万円)の請求は認めず、修理費(フレーム交換303万円余)の範囲で認めた。」
(大阪地裁判決平成14年6月25日 交通事故民事裁判例集35・3・888)




◆物損・車両時価の算定例


「買替が社会通念上相当と認められるときは、車両の時価と売却代金の差額を請求できるとし、車両の時価とは、同一の車種・年式・型・同程度の使用状況・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するに要した価格をいうとした。」
(最高裁判例昭和49年4月15日 民事判例集28・3・385 交通事故民事裁判例集7・2・275)

「登録後14年余を経過して評価額0円の小型乗用車につき、車検期限まで96日間、1日2000円の割合による19万2000円の使用価値を認め、この使用価値相当額をもって車両損害とした。」
(大阪地裁判決平成2年12月20日 自動車保険ジャーナル911・2)

「新車価格が92万7000円の登録後8年半を経過した車両につき、省令別表の定める新車の耐用年数6年を経過しているので評価不能とし、定率法で減価償却した6年後の残存率が10%であることから、時価を10万円とした。」
(東京地裁判決平成13年4月19日 交通事故民事裁判例集34・2・535)

 
 

◆物損・登録手続関係費


買替のため必要になった登録、車庫証明、廃車の法定の手数料相当分及びディーラー報酬部分(登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料)のうち相当額並びに自動車取得税については損害として認められる。
なお、事故車両の自賠責保険料、新しく取得した車両の自動車税、自動車重量税、自賠
責保険料は損害とは認められないが、車両本体価格に対する消費税相当額、事故車両の自動車重量税の未経過分(「使用済自動車の再資源化等に関する法律」により適正に解体され、永久抹消登録されて還付された分を除く)は、損害として認められる。

「中古車の全損のため買替費用中、被害者の納付済みの自動車税、自動車重量税、自賠責保険料は否定し、新規乗用車の車検手数料及び車庫証明費用は損害と認めた。」
(東京地裁判決平成6年6月24日 交通事故民事裁判例集27・3・819)

「経済的全損の事例で中古車の購入が可能であったにもかかわらず新車を購入した場合、新車購入の際に通常課せられる自動車重量税は損害と認められないとし、自動車取得税と登録諸費用を損害と認めた。」
(名古屋地裁判決平成10年10月2日 自動車保険ジャーナル1297・2)

「被害車両と同種同等の車両を再調達する場合の費用としてリサイクル料金1万5550円を損害と認めた。」
(名古屋地裁判決平成21年2月13日 交通事故民事裁判例集42・1・148)

 
 

◆物損・評価損


修理しても外観や機能に欠陥が生じ、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合に認められる。

「トヨタ・レクサスにつき、損傷部分がバンパーやフロントフェンダー等で、車両の主要な骨格部分が含まれておらず、損傷部分の部品のほとんどを交換しており、性能・外観の低下や中古車としての交換価値の低下が残存するとは容易に考えられないとして格落損害を否定した。」
(名古屋地裁判決平成5年10月8日 自動車保険ジャーナル1046・2)

「ホンダ・オデッセイにつき、バンパー凹損、後部タイヤ上後部本体の凹損、右後部から後側部にかけての歪み、マフラーの損傷があった場合に、修理費の2割に相当する4万4734円の評価損を認めた。」
(東京地裁判決平成10年12月9日 交通事故民事裁判例集31・6・1880)

「三菱・GTO(初度登録後2年、走行距離1.4万㎞、時価201万円)につき、修理費用3割に相当する13万8206円の評価損を認めた。」
(東京地裁判決平成13年1月25日 交通事故民事裁判例集34・1・56)

「日産・セフィーロ(登録1カ月余、走行距離2000㎞)につき、修理費65万710円(リヤバンパ、トランクリット、フロントバンパ等の損傷)の20%相当額の13万142円の評価損を認めた。」
(東京地裁判決平成14年1月16日 交通事故民事裁判例集35・1・9)

 
 

◆物損・代車使用料


相当な修理期間または買替期間中、レンタカー使用等により代車を使用した場合に認められる。修理期間は1週間ないし2週間が通例であるが、部品の調達や営業車登録等の必要があるときは長期間認められる場合もある。

(1)代車の必要性

「水産会社に勤務する被害者につき、勤務の性質上、早朝の通勤を要し乗用車を使用する必要性があるとして、最初の33日間はレンタカー使用料日額6000円(1カ月15万円)、残りの26日間は知人の乗用車を日額3000円で賃借したとして合計額を認めた。」
(横浜地裁判決平成1年6月27日 交通事故民事裁判例集22・3・727)

「被害車両(普通自動車)を使用して自宅から約3㎞の会社に通勤していた被害者(男)につき、バスや電車等の公共の交通機関やタクシーの利用では不十分との主張・立証がないうえ被害者宅には被害車両の他に普通自動車、軽トラック、原付自転車各1台があるとして、代車使用の必要性を認めなかった。」
(大阪高裁判決平成5年4月15日 交通事故民事裁判例集26・2・303)

「顧客の送迎に使用していた事故車両(ロールスロイス)のほかにスポーツ車(ベンツ)を所有していたとしても、使用目的に照らして代車となりえないとして、代車の必要性を認めた。」
(京都地裁判決平成14年8月29日 自動車保険ジャーナル1488・18)

 

(2)代車の種類

「キャデラックリムジンの代車使用料につき、被害車両を営業車として使用していた理由(安全で、ファックス等の備付けがあり、多人数の乗車が可能等)は、代車を必要とする期間が修理期間の短期間であることから、国産高級車で十分代替できるとして、実際に支出したキャデラックリムジンの代車使用料488万655円ではなく、日額2万5000円で39日間の代車料97万5000円を認めた。」
(東京地裁判決平成7年3月17日 交通事故民事裁判例集28・2・417)

「ロールスロイスの代車使用料につき、代車期間は80日間(修理見積書作成期間30日、修理をするか買い替えるかの判断期間10日間、修理期間40日間)を相当とし、被害車両が社用車として接待等に使用されていた趣旨に鑑みると、実際に代車として使用したメルセデスベンツのリムジン車の日額4万円の必要性は認められないが、国産最高級車クラスの車両の日額2万円が相当であるとして、合計160万円の支出を認めた。
(東京地裁判決平成8年5月29日 交通事故民事裁判例集29・3・810)




◆物損・休車損


営業車(緑ナンバー等)の場合には、相当なる買替期間中もしくは修理期間中、認められる。

「タクシーにつき、タクシー会社は事故当時、35台の車両に対して1カ月毎に乗務員約78名の乗務予定を稼働可能な全車両に予め割り当てており、車両の点検整備・修理や乗務予定の者の欠勤のために稼働させることが出来ない車両を除く全ての車両を常時稼働させていたことが認められるから、被害車両の稼働を他の車両の運行によって賄うことが出来たとは言えないとして、運賃収入から、燃料費・修理代・乗務員人件費等の諸経費を引いた額について、4.5日分の休車損を認めた。」
(神戸地裁判決平成15年1月22日 交通事故民事裁判例集36・1・85)

「営業用貨物車につき、代替車搬入までの49日分80万円を請求した事案において、被害者が取引先からの依頼を断ったことはなく、3台の車両と4人の熟練した従業員により本件事故前と同程度の売上を確保していたが、それは被害者による営業努力による面も大きいとして、上記49日間について、被害車による粗利益の30%に相当する23万7008円の休車損を認めた。」
(名古屋地裁判決平成15年5月16日 自動車保険ジャーナル1526・16)

「運送会社の大型貨物車につき、車両が稼働できなかったことによる逸失利益から、車両の運転手が稼働できなかったことによる支出を免れた休日手当、出張手当、調整手当及び時間外手当を差し引いて休車損を算定した。」
(東京地裁判決平成18年8月28日 交通事故民事裁判例集39・4・1160)


 

◆物損に関連する慰謝料


原則として、認められない。

「メルセデス・ベンツの車両損害に対する慰謝料につき、財産的権利を侵害された場合に慰謝料を請求し得るには、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情が存することが必要であるとして否定した。」
(東京地裁判決平成1年3月24日 交通事故民事裁判例集22・2・420)

「霊園における墓石等に対する衝突事故により墓石が倒壊し、骨壷が露出する等した事案につき、墓地等が先祖・故人の眠る場所として通常その所有者にとって強い敬愛追慕の念の対象となるという特殊性に鑑み、慰謝料10万円を認めた。」
(大阪地裁判決平成12年10月12日 自動車保険ジャーナル1406・4)

「乗用車に突っ込まれて自宅玄関が損壊した事案につき、損害賠償交渉が難航したことも相俟って、年末年始を含む1カ月以上にわたり表玄関にベニヤ板を打ち付けた状態で過ごすことを余儀なくされたことから、慰謝料20万円を認めた。」
(大阪地裁判決平成15年7月30日 交通事故民事裁判例集36・4・1008)

 
 

◆ペットに関する損害


「飼い犬(ゴールデンリトリバー)が頭部打撲、左側胸部裂傷、消化器内損傷等の傷害を負った事案につき、夜間、救急動物病院等で治療を受けた治療費6万円余、タクシー代2730円、掛かり付けの獣医科医院で血液検査を受けさせた費用5000円を損害と認めた。」
(大阪地裁判決平成15年7月30日 交通事故民事裁判例集36・4・1008)

「犬の葬儀費用2万7000円のほか、長い間家族同然に飼ってきたことを理由に、飼い主に慰謝料5万円を認めた。」
(東京高裁判決平成16年2月26日 交通事故民事裁判例集37・1・1)

「助手席に籠に入れた犬を乗せていたときの事故につき、犬に生じた軽度打撲と右前肢跛行のための7回分の治療費3万円余を認めた。」
(東京地裁判決平成18年1月24日 交通事故民事裁判例集39・1・70)

「生後1歳6月のパピヨンが死亡し、シーズーが左側座骨を骨折した事案につき、パピヨンは血統書付きのセラピー犬であったこと、一般にペットタイプが15万円以上、ショータイプが35万円以上すること、平均寿命が16年長であることから財産的損害として15万円、火葬関係費用2万円余、シーズーについては治療費8万円余を認め、犬の死傷による飼主の慰謝料10万円、合計36万円余を認めた。」
(大阪地裁判決平成18年3月22日 判例時報1938・97)

「8歳雄のラブラトールレトリバー(購入価格6万5000円)が、第二腰椎圧迫骨折の傷害を被り、後肢麻痺、排尿障害の症状が残った事案につき、動物病院に入院中の約20日間における治療費、入院費、車椅子製作料の合計13万6500円と、買い主夫婦に対して合計40万円の慰謝料を認めた。」
(名古屋高裁判決平成20年9月30日 交通事故民事裁判例集41・5・1186)

「盲導犬の死亡事案につき、盲導犬の客観的価値は、1頭を育成するのにかかった育成費用を、盲導犬としての活動期間を10年とみた場合の残余活動期間の割合に応じて減じた価値とするものとし、5年余りの残余期間のあった盲導犬の客観的価値を260万円と算定した。」
(名古屋地裁判決平成22年3月5日 判例時報2079・83)

 

 

◆損益相殺


被害者またはその相続人が事故に起因して何らかの利益を得た場合、当該利益が損害の填補であることが明らかであるときは、損害賠償額から控除する場合がある。

1.損害賠償額より控除した例

(1)受領済の自賠責損害賠償額
(最高裁判例昭和39年5月12日 民事判例集18・4・583 判例時報377・57)

政府の自動車損害賠償保障事業填補金
(金沢地裁判決昭和43年10月23日 交通事故民事裁判例集1・4・1216)

(2)受領済の各種社会保険給付

〇厚生年金保険法による遺族厚生年金
(最高裁判決平成16年12月20日 判例時報1886・46)

〇厚生年金保険法による障害厚生年金
(神戸地裁判決平成6年12月9日 交通事故民事裁判例集27・6・1824 最高裁判決平成11
年10月22日判例時報1692・50)

〇労働者災害補償保険法による休業補償給付金・療養補償給付金
(大阪地裁判決平成12年2月21日 交通事故民事裁判例集33・1・292)

労働者災害補償保険法による障害(補償)一時金
(名古屋地裁判決平成11年9月27日交通事故民事裁判例集32・5・1475)

労働者災害補償保険法による遺族補償年金
(最高裁判決平成5年3月24日 判例時報1499・49)

労働者災害補償保険法による葬祭給付・遺族年金前払一時金
(大阪地裁判決平成14年1月25日 交通事故民事裁判例集35・1・113)

労働者災害補償保険法による障害補償年金前払一時金
(大阪地裁判決平成13年10月29日 交通事故民事裁判例集34・5・1448)

労働者災害補償保険法による障害補償年金・介護補償給付金
(東京地裁判決平成20年1月24日 交通事故民事裁判例集41・1・58)

健康保険法による傷病手当金
(名古屋地裁判決平成15年3月24日 判例時報1830・108)

国民健康保険法による高額療養費還付金
(東京高裁判決平成15年7月29日 判例時報1838・69)

国民年金法による遺族基礎年金
(神戸地裁判決平成6年11月29日 交通事故民事裁判例集27・6・1768)

国民年金法による障害基礎年金
(最高裁判決平成11年10月22日 判例時報1692・50)

地方公務員等共済組合法の遺族共済年金
(神戸地裁判決平成10年8月28日 交通事故民事裁判例集31・4・1268)

 

2.損害賠償額より控除しなかった例

(1)自損事故保険金
(東京高裁昭和59年5月31日 交通事故民事裁判例集17・3・603)

(2)搭乗者傷害保険金
(最高裁判決平成7年1月30日 判例時報1524・48)

なお、加害者が保険料を負担している場合に慰謝料の斟酌事由とした事例がある。
(大阪地裁判決平成10年1月27日 交通事故民事裁判例集31・1・87)など

(3)生命保険金
(最高裁判決昭和39年9月25日 民事判例集18・7・1528 判例時報385・51)

(4)傷害保険金
(京都地裁判決昭和56年3月18日 交通事故民事裁判例集14・2・408)

(5)労災保険上の特別支給金等
労働者災害補償保険法による休業特別支給金、障害特別支給金等の特別支給金
(最高裁判決平成8年2月23日 判例時報1560・91)

休業特別支給金、傷病特別年金
(東京地裁判決昭和61年11月11日 交通事故民事裁判例集19・6・1559)

休業特別支給金、障害特別支給金、同年金、障害特別年金差額一時金
(大阪地裁判決平成3年1月17日 交通事故民事裁判例集24・1・38)

遺族特別年金、遺族特別一時金、遺族特別支給金
(東京地裁判決昭和61年2月28日 交通事故民事裁判例集19・1・298)など

(6)地方公務員災害補償基金からの休業援護金(32万円)
(名古屋地裁判決平成19年6月22日 交通事故民事裁判例集40・3・782)

(7)生活保護法による扶助金
(最高裁判決昭和46年6月29日 判例時報636・28)

(8)社会儀礼上相当額の香典・見舞金
(大阪地裁判決平成5年3月17日 交通事故民事裁判例集26・2・359)など

(9)雇用対策法に基づく職業転換給付金(リハビリテーションの訓練手当金
(東京地裁判決昭和63年11月24日 交通事故民事裁判例集21・6・1210)

(10)独立行政法人自動車事故対策機構法(旧自動車事故対策センター法)に基づき支給される介護料
(東京地裁判決平成10年3月19日 判例タイムズ969・226)など

(11)特別児童福祉扶養手当
(大阪地裁判決平成10年6月29日 交通事故民事裁判例集31・3・929)

(12)会社の業務上災害特別支給規定に基づき事故の被害者に支給した見舞金(1万円)及び傷害見舞金(55万円)
(岡山地裁判決平成9年11月25日 交通事故民事裁判例集30・6・1672)

(13)介護費用の公的扶助
(東京地裁判決平成11年2発26日 交通事故民事裁判例集32・1・347)

(14)身体障害者福祉法に基づく給付
(大阪地裁判決平成12年7月24日 交通事故民事裁判例集33・4・1213)




◆社会保険給付等がある場合の控除制限


(1)控除が認められる場合にも同一の損害項目からのみ控除が認められる。

「労災保険法等による休業補償給付、障害補償給付は財産上の損害の補填のためのみなされるものであり、給付された補償金が財産上の損害額を上回る場合であっても、その差額を慰謝料から控除することはできないとした。」
(最高裁判決昭和58年4月19日 判例時報1078・78)など

「労災保険法による休業補償給付及び傷病補償年金並びに厚生年金保険法による障害年金によって填補される損害は、財産的損害のうちの消極損害(逸失利益)のみであって、これらの給付額を財産的損害のうちの積極損害及び精神的損害(慰謝料)との関係で控除することは許されないとした。」
(最高裁判決昭和62年7月10日 判例時報1263・15)

「死亡事故直後に受給及び支給が確定した妻の遺族基礎年金及び遺族厚生年金につき、損益相殺の対象となるとしたが、その範囲は逸失利益に限定され、他の財産的損害や精神的損害との関係で控除することは出来ないとした。」
(最高裁判決平成11年10月22日 判例時報1692・50)


「厚生年金保険法による遺族厚生年金につき、不法行為により死亡した被害者の相続人が、その死亡を原因として遺族厚生年金の受給権を取得したときは、被害者が支給を受けるべき障害基礎年金等に係る逸失利益だけでなく、給与収入等を含めた逸失利益全般との関係で、支給を受けることが確定した遺族厚生年金を控除すべきとした。」
(最高裁判決平成16年12月20日 判例時報1886・46)

「健康保険法による高額療養費のうち、損害賠償と同一の事由に関して損害を填補するといえるものは、治療費が請求されている期間に対応する部分のみであるから、その期間に対応する高額療養費の給付額のみを控除すべきとした。」
(名古屋地裁判決平成15年3月24日 判例時報1830・108)

「労災保険法による療養補償給付は治療費、付添看護費及び入院雑費等に、休業補償給付及び障害補償給付は休業損害及び逸失利益にそれぞれ填補されるとした。」
(名古屋地裁判決平成21年3月25日 交通事故民事裁判例集42・2・440)


(2)支給が確定していない場合には、控除は認められない。

「地方公務員等共済組合法による退職年金を受給していた者が死亡した場合、支給を受けることが確定した遺族年金の額の限度で、受給権者の損害額からこれを控除すべきものであるが、いまだ支給を受けることが確定していない遺族年金の額についてまで損害額から控除することを要しない。」
(最高裁大法廷判決平成5年3月24日 判例時報1499・49)

厚生年金法による障害厚生年金について同旨
(大阪地裁判決平成7年8月25日 交通事故民事裁判例集28・4・1168)

遺族厚生年金について同旨
(神戸地裁判決平成11年4月21日 交通事故民事裁判例集32・2・659)

国民年金法のよって支給される障害基礎年金について同旨
(最高裁判決平成11年10月22日 判例時報1692・50)

労災保険法による障害年金について同旨
(東京地裁判決平成7年11月4日 判例タイムズ904・177)

介護保険法による給付について同旨
(東京地裁判決平成15年8月28日 交通事故民事裁判例集36・4・1091)など

「事故から2年経ち、加害者は、相続人が申請しさえすれば遺族年金の支給を受けられたはずであるとして損益相殺を主張したが、相続人について遺族年金の支給を受けることが確定したと認めるに足りる証拠はないとして、損益相殺をするべきとする加害者の主張を採用しなかった。」
(大阪地裁判決平成17年4月1日 交通事故民事裁判例集38・2・558)

「被害者が請求したならば障害基礎年金を得られたであろう場合でも、未請求であったときは損益相殺の対象とならないとした。」
(大阪地裁判決平成18年11月16日 交通事故民事裁判例集39・6・1598)


 

◆社会保険給付等がある場合の過失相殺の方法


(1)国民年金、健康保険、厚生年金
損害額から保険給付額を引いた残額に対して過失相殺する。

「自賠責保険・共済において被保険者の重過失が認められ、保険金額・共済金額の減額が行われた場合、健康保険等は、過失により減額された割合で減額した額でもって加害者側に求償して差し支えない。」
(昭和49年1月28日 厚生省ー保険発第10号、社会保険庁-庁保第1号)

「第三者行為により生じた保険事故につき、保険者は被害者にも明らかに過失があると認めるときは、保険者において妥当な過失割合を求め、その割合に応じて求償額を減額し算定して差し支えない。」
(昭和54年4月2日 厚生省ー保険発第24号、社会保険庁ー庁保第6号)

「健康保険組合から支払われた金額については、過失相殺前に原告の損害から控除するのが相当とした。」
(大阪地裁判決平成10年11月30日 交通事故民事裁判例集31・6・1789)
(名古屋地裁判決平成10年12月4日 交通事故民事裁判例集31・6・1867)
(名古屋地裁判決平成15年3月24日 判例時報1830・108)

(2)労災保険
労災保険給付は、被害者の実損害を填補するもので、加害者に対する損害賠償請求権を填補するものではないとして、健康保険と同一の取扱いをする例と、他の損害填補と同様に扱うことが損害賠償法理にかなうものとして、過失相殺後の損害賠償額から控除する例がある。

「実損害から控除し、過失相殺後の賠償額から控除しなかった事例」    
(東京地裁判決昭和47年3月8日 交通事故民事裁判例集5・2・335)
(名古屋地裁判決昭和53年11月29日 交通事故民事裁判例集11・6・1721)
(浦和地裁判決昭和61年11月26日 判例時報1222・101)
(福岡地裁小倉支部判決昭和63年11月30日 交通事故民事裁判例集21・6・1244)

「過失相殺後の損害賠償額から控除するのが相当であるとした事例」
(最高裁判決平成1年4月11日 判例時報1312・97、但し、伊藤正己裁判官の反対意見がある)
(東京地裁判決平成12年3月31日 交通事故民事裁判例集33・2・681)
(大阪地裁判決平成21年9月30日 自動車保険ジャーナル1827・22)

政府保障事業によるてん補金
「政府保障事業に関する損害のてん補額を計算するにあたって、国民健康保険法による葬祭費の支給額を控除すべきときは、被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をし、その残額からこれを控除するとした。」
(最高裁判決平成17年6月2日 判例時報1900・119判例タイムズ1183・234)



◆共同不法行為の場合の填補関係


「一つの交通事故の共同不法行為者である甲及び乙のうち、乙の損害賠償責任についてのみ過失相殺がなされ、甲及び乙が賠償すべき損害額が異なる場合に、甲がした損害の填補は被害者が填補を受けるべき損害額から控除すべきであって、控除後の残損害額が賠償すべき損害額を下回らない限り、乙が賠償すべき損害額に影響しないとした。」
(最高裁判決平成11年1月29日 判例時報1675・85)

「自賠責保険の保険金は、被保険者の損害賠償債務の負担による損害を填補するものであるから、共同不法行為者間の求償関係においては、被保険者の負担部分に充当されるべきであるとした。」
(最高裁判決平成15年7月11日 判例時報1834・37判例タイムズ1133・118)

 

◆人身傷害補償保険


人身傷害補償保険に基づく保険金請求権と加害者に対する損害賠償請求権との関係については、次に紹介する裁判例のとおり見解が分かれているが、保険金が損害賠償請求において算定される総損害のうち被害者過失相当額にまず充当され、それを超える金額があるとき被害者の損害賠償請求権に充当されるという考え方に基づく裁判例が最近多くなっている。

「被害者の遺族が、加害者に対する損害賠償請求と、保険会社に対する人身傷害保険金請求とを併合提起した事案において、加害者の負担する不法行為に基づく損害賠償債務と、保険会社の負担する自家用自動車総合保険契約の人身傷害補償特約に基づく保険金支払債務とは、不真正連帯債務類似の関係に立ち、被害者がいずれかの債務の履行を受けた場合、損害の填補として消滅するとした。」
(東京地裁判決平成16年6月28日 交通事故民事裁判例集37・3・804)

「被害者が人身傷害補償保険(人身保険)の保険金を受領した後に、加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起し、被害者に15%の過失が認められた事案において、保険金を支払った保険会社が代位によって被害者の加害者に対する損害賠償請求権を取得する範囲は、支払った保険金のうち加害者の過失割合部分であるとして、支払った保険金の85%(加害者の過失割合)に相当する額を、過失相殺後の被害者損害額から控除した。」
(神戸地裁判決平成16年7月7日 交通事故民事裁判例集37・4・895)

「被害者に対して人傷保険金を支払った保険会社は、被害者の過失相殺後の損害額の限度で被害者の加害者らに対する損害賠償請求権を代位取得するとした。」
(名古屋地裁判決平成17年10月5日 交通事故民事裁判例集38・5・1386)

 

◆被害者請求と社会保険の競合


「被害者が、医療給付を受けてもなお填補されない損害について有する自賠法16条1項の直接請求権と、医療給付を行った社会保険者が代位取得した同請求権とが競合し、その合計額が自賠責保険金額を超えるときであったも、被害者は、社会保険者に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で同請求権に基づき損害賠償額の支払を受けることができるとした。」
(最高裁平成20年2月29日 判例時報2004・77)

 

◆無償同乗

無償同乗自体を理由としては減額しない。

「深夜ドライブで、休憩も取り4人の交替運転中の事故につき、被害者自身において事故発生の危険が増大するような状況を現出させたり、あるいは事故発生の危険が極めて高いような客観的事情が存在することを知りながらあえて同乗したなど、同乗者に事故の発生につき非難すべき事情がない以上、好意同乗の事実だけで被害者の損害賠償額を減額することはできないとした。」
(東京地裁判決平成2年7月12日 自動車保険ジャーナル900・2)

「交際相手の運転する車両に無償で自発的に同乗してドライブに出掛けた際の事故につき、被害者には事故に繋がるような無謀な運転を誘発したり容認するなどの帰責事由は認められないとして、好意同乗減額を否定した。」
(東京地裁判決平成7年12月27日 交通事故民事裁判例集28・6・1884)

「スキー場に向かい走行中路面凍結のため車両がスリップしてトンネル壁に衝突し、助手席でシートを倒し仮眠中であった被害者が受傷した事案につき、被害者は単なる便乗・同乗者であり事故発生の危険性が増大するような状況を自ら積極的に現出させたり、事故発生の危険が高い事情が存在することを知りながらこれを許容して同乗した等の事情はないとして、減額を否定した。」
(大阪地裁判決平成18年4月25日 交通事故民事裁判例集39・2・578)
 

◆同乗者の帰責事由(危険承知、危険関与・増幅等)による減額が問題となった事例


(1)減額を認めなかった事例

「友人である被害者を同乗させての旅行中の事故につき、被害者もガソリン代等を均等に負担していたことから全くの無償同乗とはいえず、事故態様(カーブを曲がり切れずに道路外に逸脱し、対向車線に進出して対向車と衝突)も考慮すると、減額しないと信義側ないし衡平の原則に反するとまでは認められないとした。
(大阪地裁判決平成2年4月23日 交通事故民事裁判例集23・2・473)

「加害者運転の普通貨物車が停車中の大型貨物車に衝突した事故において、加害車に同乗し死亡した被害者の両親が加害者に対して損害賠償を請求した事案につき、被害者は加害者とともに飲酒し徹夜に近い状況で同乗していたが、加害者の酒気帯びの程度は呼気1L中0.1㎎以下であり直ちに飲酒ないし過労によって前方不注意に陥っていたとまでは推認できず、過労の影響を全く否定できないとしても事故は加害者の車線変更時の脇見という大きな過失によって起きたもので、過労・飲酒と結びつけて過失相殺することは相当でなく、被害者のシートベルト不装着は、車両損傷状況、死因、同じく不装着の加害者に大きな怪我がなかったこと等から死亡と因果関係があるとはいえないとして減額を否定した。」
(大阪地裁判決平成18年7月20日 交通事故民事裁判例集39・4・1043)

「免許停止処分中の加害者が運転する自動二輪車に同乗中、信号のある交差点で対向右折車と衝突し被害者が死亡した事故につき、被害者の相続人が双方車両の運転者に対して損害賠償を請求した事案につき、事故態様及び加害者の過失の内容を総合し、免許取得後1年以内の二人乗りは禁止されているが、被害者がその事実を認識しながら同乗していたとしても過失相殺すべき過失があるとはいえないとして減額を否定した。」
(大阪地裁判決平成18年11月2日 自動車保険ジャーナル1707・11)

 

(2)減額がなされた事例

「元職場の先輩が運転する加害車に同乗して飲酒目的で居酒屋へ向かい、飲酒後再び助手席に同乗中、トンネル内で車線変更の際ハンドルをとられた加害車が側壁に衝突・横転し被害者が受傷した事故につき、当初から加害者が飲酒運転することを容認していた上、飲酒を承知で同乗していること、40キロの速度超過には飲酒が少なからず影響を与えていることから、被害者のシートベルト不装着も考慮して2割を減額した。」
(名古屋地裁判決平成20年1月29日 交通事故民事裁判例集 41・1・114)

「乗用車が対向車線の普通貨物車に衝突し、乗用車の同乗者が受傷した事故につき、乗用車運転手との関係で、被害者は運転手の無免許や自動車検査証の有効期限徒過等は知らなかったとしても、飲酒する目的で乗車し、運転手とともに飲酒後、飲酒運転を容認して同乗していたとして、損害の25%を減額した。」
(大阪地裁判決平成21年3月24日 自動車保険ジャーナル1818・46)

「原付自転車に3人乗り、赤信号無視で訴外車に衝突した事故につき、ステップ部分にヘルメットなしで乗車していた被害者について、運転者の赤信号無視を容認していたという事情はないが、3人乗りをしていて停止したくなかったことが運転者の赤信号無視の理由の一つになっている等から、損害の25%を減額するとした。」
(横浜地裁判決平成21年12月17日 自動車保険ジャーナル1818・126)

 

◆無償同乗・慰謝料において斟酌した事例


「スピンターン(ブレーキターン)をして停車しようとし、横転した加害車に同乗中の被害者が死亡した事故につき、被害者は実行に加担はしなかったが、危険の発生を容認したものとして、公平の見地から慰謝料について30%の減額を認めた。」
(静岡地裁判決平成1年10月16日 交通事故民事裁判例集22・5・1138)

「仮免許を取得した被害者が、友人である加害者の運転のもと、母から借りた父名義の車に同乗中、交差点を右折する際に塀に衝突して受傷した事故につき、被害者が道案内をして右折を指示した後に生じた事故であること、加害者は、事故から2時間30分以上前であるが、被害者と会った際、ビールをコップ1杯半飲んだことが認められる等の事情を勘案しても、高々慰謝料の算定についての好意同乗による減額が考えられるのみであるとした。」
(大阪高裁判決平成2年7月20日 交通事故民事裁判例集23・4・827)
 

 

◆無償同乗・シートベルト


「父親の運転する被害車両にシートベルトを装着せず同乗していた子2人が加害者両の運転者らに対して損害賠償を請求した事案につき、助手席の同乗者には10%の過失相殺を認めたが、後部座席の同乗者には、運転者が後部座席に乗車する者にシートベルトを装着させるべき義務は努力義務とされており、後部座席に同乗する者がシートベルトを装着することが一般化しているとはいえない実情を配慮して過失相殺を認めなかった。」
(東京地裁判決平成15年5月8日 交通事故民事裁判例集36・3・614)

「加害者が乗用車を運転し40キロ速度超過の120キロで進路変更する際に急転回したため操縦不能で暴走しガードレールに衝突した事故につき、助手席に同乗し死亡した被害者はシートベルトを着用していなかったが、加害者が被害者にシートベルトを着用させるのは容易であること、事故が加害者の甚だしい無謀運転に起因することから過失相殺を否定した。」
(横浜地裁判決平成17年9月22日 交通事故民事裁判例集38・5・1306)

「助手席に同乗していた被害者のシートベルト不着用による損害拡大を認めつつ、加害者が運転者として(シートベルトを装着させるように)注意すべき立場にあったことを理由に減額を否定した。」
(富山地裁高岡支部判決平成18年4月3日 自動車保険ジャーナル1656・2)

「平成16年12月発生の死亡事故につき、道交法上のシートベルト装着義務の名宛人は運転者であるが、助手席同乗者のシートベルト装着義務がすべての道路で法制化されたのは昭和60年であり既に社会に定着していること、自らの生命、身体を保護するために当然に負うべき義務と考えられること、同義務を怠った同乗者は自ら損害拡大の危険性が高い状況を作出したといえることから、同乗者のシートベルト装着義務違反は運転者に対する関係でも損害の減額事由となるとした。」
(東京地裁判決平成19年3月30日 交通事故民事裁判例集40・2・502)

 

 

◆素因減額

 
素因は、一般的に、被害者の精神的傾向である「心因的要因」と、既往の疾患や身体的特徴などの「体質的・身体的素因」とに分類されている。減額の割合は、具体的事案毎に個別に判断されているのが現状である。なお、被害者の自殺と事故との因果関係が認められる事案においては、心因的要因の寄与が問題となることが多い。

 

<心因的要因(最高裁判例・減額肯定例)>

「事故により頭頚部軟骨組織に損傷が生じ外傷性頸部症候群の症状を発した後、10年以上の入退院を継続した被害者につき、事故後3年を経過した日までに生じた損害についてのみ相当因果関係があるとしたうえで、被害者の特異な性格、被害者の言動に誘発された一面もある初診医の常識はずれの診断とこれに対する過剰な反応、本件事故前の受傷及び損害賠償請求の経験、加害者の態度への不満等の心理的要因によって賠償性神経症を引き起こし、被害者の回復への自発的意欲の欠如等があいまって適切さを欠く治療を継続させた結果、症状の悪化と固定化を招いたと考えられるとし、このような事情のもとでは、「3年間にわたって生じた損害の全てを被告らに負担させることは公平の理念に照らし相当ではない。すなわち、右損害は本件事故のみによって通常発生する程度、範囲を超えているものということができ、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与していることが明らかであるから、損害賠償の額を定めるに当たっては、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用した、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができる」と4割の限度に減額した。」
(最高裁判決昭和63年4月21日 民事裁判例集42・4・243)

 

 

◆素因減額・減額否定例


「業務の負担が加重であることを原因とする損害賠償請求においても、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、損害の発生又は拡大に寄与した被害者の性格等の心因的要因を一定の限度で斟酌することができるとしたうえ、企業に雇用される労働者の性格が多様のものであることはいうまでもないところ、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでないかぎり、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の加重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものということができ、しかも、使用者又は代理監督者は、各労働者の配置先、遂行すべき内容を定める際に、各労働者の性格をも考慮することができるから、「労働者の性格が前記範囲を外れるものでない場合には、裁判所は、使用者の賠償すべき額を決定するに当たり、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を、心因的要因としてしんしゃくできない」とし、被害者の性格は、まじめで責任感が強く、几帳面かつ完璧主義で自ら抱え込んでやるタイプで能力を超えて全部自分でしょい込もうとする行動傾向があるが、「このような被害者の性格は、同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものだったと認めることはできない」として、過労によりうつ病に罹患し自殺した被害者の心因的要因による減額を否定した。」
(最高裁判決平成12年3月24日 民事裁判例集54・3・1155)

 

 

◆素因減額、体質的・身体的素因

 

<最高裁判例 減額肯定例>

一酸化炭素中毒の既往症
「一酸化炭素中毒に罹患していた被害者について、いったんは潜在化ないし消失していた一酸化炭素中毒による各種精神的症状が、本件事故による頭部打撲傷により顕在発現して長期にわたり持続し、次第に増悪して死亡したとしたうえで「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者の損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患を斟酌することができるものと解するのが相当である。けだし、このような場合においてもなお、被害者に生じた損害の全部を加害者に賠償させるのは、損害の公平な分担を図る損害賠償法の理念に反するものといわなければならないからである」と、50%の減額をした原審の判断を是認した。」
(最高裁判決平成4年6月25日 民事裁判例集46・4・400、判例タイムズ813・198、判例時報1454・93)

 

<身体的特徴ー首が長い>
「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しないかぎり、被害者の身体的特徴を斟酌することはできないと解すべきである。けだし、人の体格ないし体質は、すべての人が均一同質なものということはできないものであり、極端な肥満など通常人の平均値から著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が、転倒などにより重大な傷害を被りかねないことから日常生活においては通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められるような場合は格別、その程度に至らない身体的特徴は、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されているものというべきだからである。」と、首が長くこれに伴う多少の頸椎不安定症がある被害者について、それを斟酌することを否定した。
(最高裁判決平成8年10月29日 民事裁判例集50・9・2474、交通事故民事裁判例集29・5・1255)

 

 

◆素因減額・無症状の後縦靭帯骨化症


最高裁判決平成4年6月25日(一酸化炭素中毒の既往症)をふまえたうえで、斟酌(考慮)の対象となる疾患につき、「加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか、疾患が難病であるかどうか、疾患に罹患するにつき被害者の責めに帰すべき事由があるかどうか、加害行為により被害者が被った衝撃の強弱、損害拡大の素因を有しながら社会生活を営んでいる者の多寡等の事情によって左右されるものではない」とした。
(最高裁判決平成8年10月29日 交通事故民事裁判例集29・5・1272)

 

◆素因減額・事故時妊娠中だったことを考慮しなかった例


「全身打撲挫創、右腎損傷、左外傷後尖足拘縮等で事故から約13か月の治療後に左足関節機能障害(12級7号)の主婦(事故時妊娠中。固定時28歳)につき、出産で通院を中断しリハビリを十分行うことができなかったことが後遺障害に影響したことは否定できないが、妊娠自体は疾患に当たらないことはもちろん、いわば一時的な生理的現象とでもいうべきものであるとして減額を否定した。」
(東京地裁判決平成15年12月8日 交通事故民事裁判例集36・6・1570)
*控訴審の東京高裁判決平成16年4月27日 自動車保険ジャーナル1560も減額を否定した。
 

◆素因減額・年相応の骨密度の低下を考慮しなかった例


「右大腿骨頸部内側骨折で100日入院治療し、人工骨頭置換術による右股関節機能障害(45%労働能力喪失)の美容院経営兼主婦(事故時62歳)につき、同年代の女性相応の骨密度低下傾向は認められたが、骨粗鬆症と評価されるほどではないとして減額を否定した。」
(大阪地裁判決平成15年2月20日 交通事故民事裁判例集36・1・225)

 

◆素因減額・脊柱管狭窄状態を考慮しなかった例


「前縦靭帯及び後縦靭帯断裂による頸椎椎間板ヘルニア発症に対する頸椎前方固定術等で1年5カ月の治療後に併合8級(脊柱変形障害11級5号、骨盤骨変形障害12級5号、頸髄不全麻痺9級10号)のタクシー運転手(男・固定時63歳)につき、被害者の骨性脊柱管は骨性脊柱管狭窄と評価される程度に至っており、平均的な日本人と比較すると脊髄への圧迫を生じやすく、かつその程度も高度になりやすい状態であったとしながら、受傷の重篤さ、事故による外力の大きさにかんがみると仮に骨性脊柱管の直径が平均人と同程度であったとしても頸髄不全麻痺の後遺障害が残存した可能性は大きかったとして減額を否定した。」
(京都地裁判決平成14年11月7日 自動車保険ジャーナル1484)

 

 

◆素因減額・糖尿病、高血圧の既往症を考慮しなかった例


「脾外傷、肝損傷、外傷性大動脈乖離等で2年7カ月の治療後に、脾切除、胆のう及び脾臓摘出、大動脈解離等の臓腹部臓器機能障害(7級5号)のタクシー運転手(男・固定時66際)につき、糖尿病・高血圧の既往症があり、動脈硬化による動脈壁の脆弱化が外傷性大動脈解離の発症に関与した可能性が否定できないとしても、事故態様、衝撃の程度等からすれば、既往症が損害の発生・拡大に寄与した度合いは相当軽微であるとして減額を否定した。」
(神戸地裁判決平成17年7月21日 交通事故民事裁判例集38・4・1008)

 

◆素因減額・心臓疾患の既往症を考慮しなかった例


「多発肋骨骨折によるフレイルチェスト(胸壁動揺)等の後に心房細動を頻発し、事故から102日後に舌根沈下による気道狭窄で死亡した被害者(女・事故時91歳)につき、傷害は重傷で、年齢的にみて元々快復力が期待できず、既往症(狭心症、大動脈弁閉鎖不全)がなかったとしても胸郭の治療・快復が可能であったか疑問であり死に至った可能性は高かったとして減額を否定した。」
(大阪地裁判決平成18年3月10日 自動車保険ジャーナル1663)

◆素因減額・腰痛の既往症を考慮しなかった例


「外傷性頚部捻挫、腰部打撲等で7カ月強の治療後に腰痛(14級9号)の建設業者(男・固定時53歳)につき、事故の4~5年前の既往症(腰痛)があったが、治療が腰部の症状のみによって長期化したとみることはできず、期間も7カ月強であることに照らせば、症状が既往症の存在によって特に遷延化したとまでは言えないとして減額を否定した。」
(大阪地裁判決平成20年3月11日 交通事故民事裁判例集41・2・283)

 

◆被害者側の過失


「交代で二人乗り運転をし暴走行為を繰り返していた自動二輪車と、それを制止すべく道路を塞ぐように停止していたパトカーが衝突し、自動二輪車の同乗者が死亡した事故につき、パトカーの運行供用者の賠償額を算定する場合に、過失相殺をするに当たり、自動二輪車の運転者の過失も同乗者の過失として考慮することができる。」
(最高裁判決平成20年7月4日 自動車保険ジャーナル1749)

 

◆政府保障事業によるてん補金


「政府保障事業に関する自賠法73条1項は、いわゆる損益相殺の場合とは異なり、被害者が健康保険法、労災保険法その他政令で定める法令に基づいて自賠法72条1項による損害のてん補に相当する給付に当たる年金の受給権を有する場合には、政府は、当該受給権に基づき被害者が支給を受けることとなる将来の給付分を含めて、その給付に相当する金額の限度で保障事業による損害のてん補をしない旨を定めたものと解するのが相当である。」(反対意見がある。)
(最高裁第一小法廷判決平成21年12月17日 判例時報2066・49 判例タイムズ1315・90)

 

◆損保会社が行う「任意一括払い」の法的性質について


「一括払いは、加害者のための単なる立替払いのサービスであり、医療機関の損保会社への医療費の支払請求権を与えたものでもなく、損保会社に、医療機関への医療費支払義務を課すものでもない。」
(大阪高裁判決平成元年5月12日 判例時報1340・132)

 

◆健康保険と自由診療


健保基準の2.5倍の診療報酬を容認した事例
(神戸地裁判決平成7年2月28日 交通事故民事裁判例集28・1・297)

診療単価を健保基準の1.5倍の1点15円とした事例
(福岡高裁平成8年10月23日 判例時報1595・73)

合意のない自由診療報酬について濃厚・自由診療の部分を否認し、薬剤料については1点10円、その余の部分については10円50銭とした事例
(東京地裁判決平成元年3月14日 判例時報1301・21)

右下腿脱臼開放骨折等の受傷した被害者(男・未成年)が入院した病院の自由診療の診療報酬について、念書に記載された1点単価20円の合意は成立していないとして1点単価16円とした一審判決を改めて1点単価15円が相当であるとした事例
(福岡高裁宮崎支部判決平成9年3月12日 交通事故民事裁判例集30・2・307)

被害者(頭部・頸椎・腰椎捻挫を受傷)が医療機関の診療単価が1点25円であることに同意する旨の誓約書を提出していた場合に、事故日から4カ月以上経過した治療については緊急性を要する事情が伺えないばかりか、治療内容が特に高度あるいは困難な事情も窺えず、1点25円とする合理的事情がないとして、1点20円で計算するのが信義側上相当であるとした事例
(横浜地裁判決平成14年10月28日 交通事故民事裁判例集35・6・1814)

被害者(右股関節脱臼骨折等)の転院後の154日の入院について、入院を延期してリハビリを継続していたこと(本人が強く希望)、入院の途中から松葉杖1本で歩行し全荷重となって外出・外泊をしていた等の事実から、70日目からは入院の必要性・相当性を欠いていたといえるが、通院による理学療法を受ける必要があったことは認められるとして、治療費全額のうち7割をもって事故と相当因果関係のある治療費と見るのが相当であるとした事例
(東京地裁判決平成15年4月14日判決 自動車保険ジャーナル1536・17)

受傷が否定された低髄液圧症候群の治療費につき、被害者が現にその治療費を支払っている以上、安易に減額することは相当でないとして、事故と因果関係が認められない筋合いの治療費106万円余を認めた事例
(福岡高裁平成19年2月13日 交通事故民事裁判例集40・1・1)

脊髄後索電気治療法(DCS療法)を行った遷延性意識障害(1級3号)の被害者(女・20歳)につき、従命反応の向上、部分的経口摂取、上肢の動きの向上、手指を用いた意思表示が見られたため、その治療に必要性・相当性があるとして、76万円余を認めた事例
(大阪地裁判決平成19年2月21日 交通事故民事裁判例集40・1・243)

◆1人暮らしの主婦の家事労働


「1人暮らしの被害者(女・78歳)につき、事故当時夫と死別して1人暮らしをしていたものであるが、自分の生活を維持するための家事労働に従事することができなくなった場合においても、それによる損害を休業損害と評価するのが相当である。」
(東京高裁判決平成15年10月30日)

「家事労働の中でも逸失利益として評価されるうるのは、あくまで他人(同居する家族等)のためにする労働であり、1人暮らしの者が身の回りのことを行っても財産的価値のある労働と評価されず、休業損害や逸失利益は認められない。」
(大阪地裁判決平成9年7月24日、大阪地裁判決平成11年5月13日、東京地裁判決平成12年6月27日、東京地裁判決平成14年1月29日、名古屋地裁判決平成16年6月25日)
 

◆自賠責保険の支払基準は裁判所を拘束するか


「自動車損害賠償保障法第16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して損害賠償額の支払を請求する訴訟において、裁判所は、同法16条の3第1項が規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることができる。」
(最高裁判決平成18年3月30日 交通事故民事裁判例集39・2・285)
 
 

◆親の運行供用者責任を肯定した例


「子がその所有車を友人に貸与し、その友人が事故を起こした事案で、子がアルバイト収入等で加害車両を購入し、父親に無断で父親名義で登録したが、父親は自己名義で登録されたことを知った後、自賠責保険契約を締結して保険料を支払い、ガソリン代等の費用も支出していたこと等を指摘して、父親の運行供用者責任を認めた。
(旭川地裁判決昭和50年6月3日 自動車保険ジャーナル131)

「子(16歳、高校2年生)が、アルバイト収入によって車を購入し、維持費も負担し、登録名義人にもなり、自賠責保険金も支払っていた事案で、父親は購入について承諾を与えただけであるとしても、親による扶養がなければ子が加害車両を購入することは不可能であったとし、父親は、独立して生活する能力のない未成年者を扶養している親権者として、加害者両の運行に対し支配を及ぼすことがでくる立場にあり、かつ、加害者両を支配管理するべき責務を有しているとして、父親の運行供用者責任を認めた。」
(東京地裁判決昭和50年9月29日 交通事故民事裁判例集8・5・1396)

「子が専ら使用している自動車につき、父親が名義人となって購入し、月賦の支払名義人であったこと(購入にあたっては、子が父親に無断でその印を使用したが、直後には父親はこれを承認した。)、月賦の支払を実際にしていたのは子であるが、子は親と同居して父親の援助なしには割賦金員の支払及び管理費用の支出はできなかったこと等の事実を挙げて、父親の運行供用者責任を認めた。」
(浦和地裁川越支部判決昭和51年1月26日 交通事故民事裁判例集9・1・85)

 

 

 

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